2009年7月2日(木)「しんぶん赤旗」

「水俣病特措法案」重大局面

自公と民主が密室協議

「分社化」で加害企業免罪


 水俣病被害者を切り捨て加害企業チッソの責任を免罪する水俣病特別措置法案について、自民・公明の与党と民主党が今国会の成立をめざすと合意したことで、重大局面を迎えています。民主党は、チッソを免罪する「分社化」を受け入れる方針で密室協議を進めており、水俣病患者団体や全国の公害被害者から怒りと抗議の声があがっています。

 2日にも合意する方向の与党と民主の修正協議の根本問題は、国の水俣病の認定基準(1977年の判断基準)の見直しを棚上げし、「最終的な救済」どころか水俣病被害者救済の事実上の幕引き協議となっていることです。

 2004年の最高裁判決は、水俣病被害者を大量に切り捨ててきた77年の旧環境庁認定基準を否定し、手足のしびれなど感覚障害だけで患者と認定する幅広い救済を認めました。しかし、国は77年基準に固執し、最高裁判決の認定基準による救済に背を向け続けてきました。

 ところが、与党と民主党の協議では、水俣病患者を水俣病被害者として認定する公害健康被害補償法の基準の見直しの議論はしていません。

 修正協議の中心は「チッソ分社化」をどうするかという問題に終始。「チッソ分社化」は、チッソと財界の強い要求で与党案に盛り込まれました。公害健康被害補償法に基づく地域指定を解除して認定審査の行政窓口も閉じ、同法案での救済を最後にして被害者を切り捨てようとしています。

 チッソの親会社と、利益をあげている液晶部門などの子会社とに分ける「分社化」の狙いは、親会社(補償会社)が、子会社の事業会社の株を売って清算すれば、加害企業の責任が消滅するという、チッソに都合のいいものです。

 もともと民主党提案の救済法案には「分社化」はなく、被害者救済まで「分社化は凍結」するといってきました。ところが、民主党は協議の中で「分社化」を受け入れる方針を表明したといいます。

 「死ぬまで水俣病とともに苦しみの人生を歩み続けるのに、加害企業チッソだけが救済される不正義は許せない」と水俣病被害者から厳しい抗議の声があがるのも当然です。

 マスメディアも「これでは、あとから症状の出てくる潜在患者らが、今後補償を求めようにも、その時には加害者が存在しないという事態になりかねない」(「朝日」1日付)と批判しました。

 水俣病被害者の認定についても、「四肢末梢(まっしょう)優位の感覚障害を有する者に準ずる者も含む」というだけで、最高裁判決を踏まえた認定基準や認定対象が明確にされていません。「分社化」を強行することは、将来どころか現在救済を求めている被害者の補償にも道を閉ざすことになります。

 こうした幕引きの修正協議に対し日本共産党は29日、「水俣病被害者救済に関する法案大綱」を発表。最高裁判決に基づく認定基準などや、被害の全容を明らかにする住民健康調査などを公害健康被害補償法に盛り込むことを提案し、すべての被害者救済に何が必要かを明らかにしました。

 民主党が、自ら提案した水俣病救済法案にはない「分社化」を与党との協議で容認することは、加害企業の免罪と責任逃れを許し、救済を求める水俣病患者への背信行為です。(宇野龍彦)



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