2009年6月20日(土)「しんぶん赤旗」

海外派兵政策の強行にストップかける転換を

「海賊」派兵新法


 「海の安全航行は死活問題、日本の国益に照らして一番大事」

 麻生太郎首相は18日の参院外交防衛委員会での「海賊対処」派兵新法案の締めくくり総括質疑でこう述べました。

視線の先には

 「海賊対策」を名目として「国益」「権益」を盾に軍隊を世界に派兵する―。戦争違法化以前の、古く危険な発想が示されています。その視線の先には、海外派兵恒久法の制定もあります。

 2001年の9・11テロ以降、米国の「対テロ戦争」にアジアと世界が揺れ動いてきました。「9・11テロの最大の被害者は国際法だ」という声も出されました。

 しかしいま、イラクもアフガニスタンも泥沼となり、各地の紛争に安易に軍隊を出すことへの反省が強まり、武力では紛争もテロも解決できないという流れが強まっています。「海賊」派兵新法は、二重三重に歴史と世界の流れに逆行するものです。

 さらに派兵新法は、海賊行為からの“防護”のための自衛隊による武器使用、海外での武力行使を認めました。戦後60年、政府の行為で一人も殺さずにきた日本の誇るべき歴史と、その核心である憲法9条を覆す重大な危険をもたらします。

 政府・与党は参院で否決された「海賊」派兵新法を衆院の再議決で強行しました。旧テロ特措法期限切れ後の新テロ特措法の強行(福田内閣、07年12月)、同法の延長の強行(麻生内閣、08年12月)も衆院での再議決でした。

 「数の力」を頼みにした再議決による自衛隊海外派兵が常態化しつつあります。

 しかし、政府・与党による海外派兵政策の強行は、いよいよ矛盾を深めています。麻生内閣の歴史的な支持率低迷の中で、総選挙を前にして自公両党は政権維持の重大な危機に直面しています。総選挙で海外派兵政策に審判を下し、ストップをかける転換点に差し掛かっています。

民主が助け舟

 ところがこうした流れの中で、「対決ポーズ」の一方、与党と海外派兵推進を競い、事実上これを助けているのが民主党です。

 ソマリア海賊対策で、最初に国会で議論を持ち出し、麻生首相に自衛隊派兵をけしかけたのは同党の長島昭久衆院議員でした(08年10月)。

 いま、ある同党幹部議員はこう語ります。

 「海賊(派兵)法にはインド洋での中国の拠点拡大、インドの台頭に対抗するという地政学的な背景がある。『シーレーン(海上兵たん線)防衛』の観点からは、民主党政権になったとき、海上保安庁主体にすべきだといって自衛隊を引き揚げさせたら、物笑いになる」

 民主党の「修正」案は、自衛隊派兵そのものも、武器使用基準の拡大も、追認するものでした。

 07年に新テロ特措法への「対案」として民主党が提出した「アフガニスタン復興支援法案」は、自衛隊のアフガン本土派兵と任務遂行型の武器使用を認めるもので、与党の国防族を驚かせました。昨年、同法の延長に際して、小沢グループの幹部は「政権交代を前にアメリカと衝突するのは避ける。給油法は生かしておいたほうが政権運営は楽だ」と語り、徹底抗戦を投げ出しました。(中祖寅一)


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