2009年6月6日(土)「しんぶん赤旗」

プルサーマル計画延期

電事連、経産省などに報告


 電気事業連合会は5日、核燃料サイクル施設が集まる青森県や経済産業省、原子力委員会に対し、「2010年度までに16〜18基」で実施するとしていたプルサーマル計画を見直し、目標達成時期を延期する方針を正式に報告しました。月内にも見直しの検討結果をまとめ、公表するとしています。

 計画の遅れにより、同県六ケ所村にある日本原燃の再処理工場の活用にも影響を及ぼします。このため、電事連幹部の説明を受けた後、同県の蝦名武副知事は記者団に対し「極めて遺憾」と計画見直しに不満を表明しました。

 現行計画は1997年に策定しましたが、計画は大幅に遅れています。九州、四国、中部の3電力は今秋から順次、各1基でプルサーマルを始める予定ですが、そのほかでは国の認可、地元了解ともに取り付けたのは4基にとどまっています。国の原子力委員会も計画と実際の進行状況の違いを指摘。電事連は各電力会社と協議し、計画を見直す方針を決めました。


解説

背景に国民の強い反対

現在の原発(軽水炉型原発)でプルトニウムを燃料に使用するプルサーマル計画は、政府の核燃料サイクル政策に基づいています。もともと、原発での使用済み核燃料から再処理で取り出したプルトニウムは高速増殖炉で使う計画でした。

 ところが、高速増殖炉は未解決の技術的な問題が多く、経済的にもなりたたないとして各国とも開発を断念。日本で開発を進めていた「もんじゅ」も、1995年にナトリウム漏れ・火災事故を起こして計画が破たんしました。

 再処理で取り出したプルトニウムの使い道に困った国の原子力委員会は97年、プルサーマル計画推進を決定しました。それを受けて電力業界が決めたのが別表の実施計画です。

 この実施計画通りであれば、これまでに少なくとも9基の原発でプルサーマルが実施されているはずでした。しかし、これまで1基も実施されていません。

 当初の計画通り進まなかった背景に、原発の危険を拡大させるプルサーマルへの国民的な強い反対があります。このことを象徴するのが、2001年に新潟県刈羽村で行われたプルサーマルの是非を問う住民投票でした。住民投票の結果、反対が多数を占め、東京電力が予定していた柏崎刈羽原発でのプルサーマルは断念されました。

 原発での事故や不祥事も、プルサーマル実施を阻みました。関西電力が英国で製造していたプルサーマル用のMOX(ウラン・プルトニウム混合酸化物)燃料のデータねつ造が相次いで発覚、プルサーマル実施を延期せざるをえませんでした。

 東京電力の大規模な事故隠し、美浜原発(関西電力)での11人死傷事故もプルサーマル実施に待ったをかけました。

 5月にMOX燃料が搬入された浜岡原発(中部電力)、玄海原発(九州電力)、伊方原発(四国電力)でも、プルサーマル実施には住民の反対運動が起きています。

 原発の危険を拡大するプルサーマルは、延期などではなく、根本から見直しをすべきです。(前田利夫)

表


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