2009年6月4日(木)「しんぶん赤旗」

主張

温室効果ガス削減

野心的な目標を掲げるべきだ


 地球温暖化を防止するうえで決定的というべき国際交渉の期限が半年後に迫っています。年末に開かれる国連の会議(COP15)で、2020年までの温室効果ガスの排出削減目標(中期目標)が決められます。増加の一途をたどる世界の排出量を20年までに減少に転じ、大幅削減に踏み出すことが求められています。

 政府は近く日本の中期目標を決めます。途上国を含めた排出削減を進めるため、排出量の多い先進国には特別な責任があります。温暖化問題の原点に立ち戻り、野心的な目標を掲げるべきです。

低炭素社会に向け

 温暖化の影響について先週、二つの報告書が発表されました。

 現在の世界的影響についての研究は、排出責任のない貧しい国々を中心に毎年30万人以上が死亡し、3億2500万人が深刻な被害を受け、経済的損失は1250億ドル(約12兆円)と見積もっています。研究には国連機関や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、各国研究機関などの関係者が参加しています。代表のアナン前国連事務総長は排出削減の緊急性を強調し、「政治的指導力の弱さ」に警鐘を鳴らしています。

 いま一つは日本での影響予測で国立環境研究所などの研究機関や大学が参加しています。対策をとらなければ今世紀末には豪雨の増加による洪水や台風の強大化による高潮の被害、熱中症での死亡などでの経済的損失が毎年17兆円にのぼると予測しています。

 文字通り「低炭素社会」の実現が不可欠なことを示しています。ところが、中期目標についての政府の検討は科学的要請を踏まえない重大欠陥を抱えています。

 政府は中期目標の選択肢として、1990年比で20年に「4%増」から「25%減」までの6案を示しています。眼目をもっぱら産業界の負担を抑え「国際競争力」を確保することにおいています。日本経団連も政府の甘い姿勢を歓迎して、最も緩い目標(4%増)を支持するありさまです。

 選択基準を国際的「公平性」におき、人口1人あたりの温室効果ガス排出量などさまざまな「公平性」指標があるなかで、1トンあたりのCO2を削減するのに必要な費用で比較しています。「省エネ」が進んでいるとして日本の削減目標を小さくするためです。しかも費用分析にあたって、粗鋼生産量を増やし、輸送量も減らさないなど、経済のあり方を変えないことを条件にしています。

 こうした議論で国内外の世論を納得させることはできません。温暖化防止こそが対策の眼目だということを明確にすべきです。

責任果たしてこそ

 日本共産党は1年前に発表した見解で中期目標として30%削減を提案しています。そのために、政府が産業界に削減目標を明示した公的協定を義務づける、排出量に着目した環境税を導入する、自然エネルギー重視のエネルギー政策に抜本転換する、などの具体策を示しています。

 先進国は全体で25〜40%の削減が必要です。日本の中期目標もそれに向けた指導力のあるものでなければなりません。さもなければ国際交渉への障害となり、世界との溝を深めるだけです。日本がその責任を果たしてこそ、途上国と手を携えることができます。



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