2009年5月25日(月)「しんぶん赤旗」

主張

国立大の交付金削減

教育・研究が崩壊しかねない


 「運営費交付金の削減がつづくのは大変苦しい。人文系学問が切り捨てられている」。日本共産党国会議員団が行っている国立大学実態調査で、学長から切実な訴えがだされています。先ごろ発表された教職員組合(全大教)の教員アンケートや化学会の実態調査からも、「学生教育や研究を行うための経費がまかなえない」という事態が明らかになりました。

教員・研究費削減は限界

 五年前に国立大学が法人化されて以来、国からの運営費交付金が毎年削減され、その額は五年間で七百二十億円にのぼります。これ以上の削減がつづけば、社会の知的発展をささえる大学の教育・研究基盤が崩壊しかねません。

 ある教育系大学では、人件費の削減で教員の一割が減り、その穴埋めに他の教員の授業負担を増やしたり、非常勤講師などで補っています。別の大学では、予定していたいくつかの授業が閉講になり、英語の授業数は半減したといいます。ある学長は、「これだけ人員を減らす一方で成果をあげろというのは矛盾している」と、国への批判を隠しませんでした。

 教員に配分される経常的な研究費も、多くの大学で法人化の前に比べて半分以下に減り、年間十数万円という教員が少なくありません。そうした結果、授業のビデオ教材や実験器具、学術誌などの購入に支障をきたしています。

 必要な研究費を確保するには、国の審査によって配分される競争的資金を獲得しなければならなくなっています。しかし、こうした資金は採択率が低く、しかも旧帝大系の大学に半分以上が集中しています。化学会の調査によれば、地方大学の教員研究費は、競争的資金を含めても旧帝大系の教員に比べて四分の一しかありません。

 さらに、競争的資金の申請や大学評価をうける作業に教員が多くの時間を割かれ、授業負担の増加もあって、じっくりと研究にうちこめないことが、大きなストレスになっています。全大教のアンケートでは、教員の六割が「メンタルヘルスの不安がある」と回答しています。

 国立大学の存立と発展をはかるうえで、教員数と研究費のこれ以上の削減がもはや限界であることは誰の目にも明らかです。運営費交付金の削減を中止し、十分な基盤的経費を確保することは、待ったなしの課題になっています。

 ところが、麻生太郎内閣は依然として運営費交付金の削減をやめようとはしていません。それどころか、現行の一律配分から国の大学評価にもとづき交付金を重点的に配分する方式に変えようとしています。また、二千七百億円もの基金をつくり、「世界最先端の研究」とみなす三十分野にしぼって一分野あたり九十億円を五年間投入するなど、大学間格差をいっそうひろげようとしています。

「構造改革」から脱却を

 こうした方向は、国立大学が直面する深刻な困難をいっそう激化するだけです。その大本にあるのが、大学の「構造改革」路線です。

 国立大学における教育と研究の発展をはかるためには、いまこそこの路線からの脱却をはかる必要があります。それによって大学の基盤的経費を十分確保することをはじめ、欧米に比べて半分にすぎない大学予算の大幅増額へと政治の舵(かじ)をきるべきです。



■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp