2009年5月13日(水)「しんぶん赤旗」

主張

グアム「移転」協定

国民の意思に沿う 承認否決


 参院外交防衛委員会が、在沖縄米海兵隊の移転を名目にグアムでの米軍基地建設経費の負担を日本に義務付ける、グアム「移転」協定の承認を否決しました。

 外国領土にある外国の基地のために財政支出をする国は、世界にありません。協定は世界の異常です。移転しても戦闘部隊は沖縄に残るため県民の痛みや苦しみは続きます。参議院が協定の承認を否決したのは当然で、政府・与党は参議院の決定にもとづき日米協定を断念すべきです。

際限のない税負担

 国会審議が進むにつれて、協定の新たな問題点が次々に明らかになってきています。

 協定はグアム移転と沖縄県名護市沖での海兵隊新基地の建設を「パッケージ」(一体)にしています。新基地計画は七割もの沖縄県民の反対で日米両政府の思惑通りに進んでいません。

 協定は、グアム移転をエサにして二〇一四年までの新基地建設を強要しています。外務省の梅本和義北米局長も進展がなければ「影響が出得る」と答弁しています。これは新基地に反対する沖縄県民への脅しです。県民・国民の平和的生存権をおかすものです。

 協定が際限のない日本負担につながるしくみであることも明らかになってきました。沖縄からの海兵隊移転とは関係ないのに、アンダーセン空軍基地やアプラ海軍基地の機能強化のための経費まで負担すると政府はいいだしています。「移転がスムーズにいくため」とか「地域全体の安全保障のため」というのが理由です。米海兵隊のコンウェイ総司令官がグアム基地建設にはもっと経費がかかると米議会でも証言しているときだけに、日本政府の態度は重大です。

 協定は、財政支出二十八億ドルと出資・融資、合計約六十一億ドル(六千億円)を日本が負担するとうたっています。司令部庁舎、隊舎、学校などで建設費が二十八億ドルかかるとか、米軍家族住宅が一戸八千万円も必要だというのは、在日米軍への「思いやり予算」の実績からしても大きな疑問です。

 在沖縄米海兵隊八千人を沖縄から移転させるとの政府説明がウソだったことも審議のなかで明らかになりました。

 米海兵隊一万人を残すのが政府が説明する目標で、現在のように一万二千―一万三千人の体制なら移転数は二千―三千人にしかなりません。政府は海兵隊員八千人とその家族九千人の移転によって、基地の痛みが軽減されるといってきたはずです。移転の前提が崩れた以上、協定が承認できないのは当たり前です。

戦争の協力はしない

 アメリカがグアム基地建設を重視するのは、「太平洋におけるわれわれの軍事態勢を最新のものにする」(クリントン国務長官)ためです。戦争を放棄した憲法をもつ日本が支援するなどというのは、本来筋が違います。

 協定は衆院では自民・公明の与党の賛成多数で承認され、参院に送られました。国際協定は衆参で議決が異なった場合、衆院での議決が優先されると決まっているからといって、協定の承認を強行するのは許されません。

 平和と暮らしを守るためにも、協定は不承認とし、グアムを含めた米軍再編への支援をやめることが重要です。



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