2009年5月11日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

現場で考えたい

大学新入生が生活労働相談ボランティア

理不尽さ難しさ 見て聞いて実感


 「貧困問題に興味がある」「事実を自分の目で確かめたい」―。大学の新入生が、街頭生活労働相談にボランティアとして参加しています。日本民主青年同盟(民青同盟)東京都委員会と都内の学生班が呼びかけているものです。(伊藤悠希)


 4月のある日、仕事帰りの人が行き交う東京・JR新宿駅西口。「街頭労働相談中」のボードを立て、相談員やボランティアが「気軽に相談を」と呼びかけました。

プライド

 初めて参加した1年生のAくん(18)は高校2年のとき、生活保護申請を抑制する「水際作戦」を報じる新聞記事を読み、憤りを感じて関心を持つようになりました。

 この日、Aくんは土木工事関係で働いていた48歳の男性の話に、相談員とともに耳を傾けました。1カ月前に解雇されホームレスになっていたこの男性は生活保護の申請にも行きましたが、うまくいかなかったと言います。相談員は同行を申し出ました。ところが、男性は「子どもじゃないから」と断りました。

 Aくんは貧困問題のことを本やインターネットで調べていく中で、貧困の問題は社会システムの責任だと“直感”しました。「現場に出て、解決策を考えられるようになりたい」と、街頭相談にボランティアとして参加しました。

 報道からは相談を受ける人はみんな生活保護を受けて解決できるという印象を受けていました。しかし、実際に相談者の話を聞くと一人ひとりの事例がさまざまにあることがわかりました。「相談者自身のプライドもあって、すぐに解決しない難しさがあった」と感想をのべました。

自己責任

 先輩と一緒に参加したBくん(20)=1年生=は「相談に来る人が、なぜ素直に気持ちを出せなくなってしまったのかを考えたい」と言います。

 Bくんが聞いたのは2月まで左官の仕事をしていた63歳の男性の話。病気を理由に仕事をやめさせられ、住居を引き払い、駅で寝泊まりしていました。要望は生活保護を受けることでした。

 初めて当事者の話を聞き、「社会の理不尽さを感じました」とBくん。その半面、「相談者が切羽詰まっている感じがしなくて不思議に思った」とのべました。

 Bくんがボランティアをやってみようと思ったのは実際にいろんなことを見て触れたいから。労働問題だけでなく、平和や環境問題などのフィールドワークにも参加して大学生活を有意義に過ごしたいと言います。

 街頭相談への参加を呼びかけている民青同盟の学生班の学生は「職場でひどい扱いを受けている現実とそれを自己責任にしてあきらめている姿が見えてきました。困っている人の役に立ちたいと思い、取り組みを始めました」と語ります。

忘れない

 街頭相談が始まったころから4、5回参加しているCくん(19)=2年生=は「大学だけでは見えないものもあるから実際に見て、社会のことを考える材料にしてほしい」と新入生への期待をのべます。

 Cくんはこれまで、激励してくれる人も含め20人近くと対話をしてきました。寮費と設備費を引かれ、手取りが10万円も残らなかったという大手電気メーカーの下請け会社に派遣されていた人、違法な二重派遣をされていた人、昨年秋には派遣切りで寮を追い出された人にも出会いました。

 労働時間などを聞くシール投票では近づいてくる青年が「週に80時間普通に働いています」「残業代もらってない」と話し、対話になります。「過労死ラインで働いている人やアルバイトで転々としている人も自分は大丈夫という人が多い。自分の問題としてとらえてもらえる工夫をしたい」

 Cくんは弁護士を目指しています。「生の声を聞き始めてからは、授業で出される事例に実感を持てるようになった」と話します。地方出身のCくん。経済的理由で進学をあきらめた友人の「おれも大学行きたかった」というつぶやきを聞いて上京しました。Cくん自身も奨学金を二つ利用し、アルバイトをして大学生活を送っています。

 「目にしてきた『貧困』を忘れてしまったら弁護士になっても意味がない」と、Cくんは参加し続ける理由を語りました。


 街頭生活労働相談 昨年4月から月1回のペースで、15回開催。民青同盟東京都委員会や日本共産党東京都委員会と一緒に民青同盟の学生班がボランティアを呼びかけています。谷川智行衆院比例東京ブロック候補(医師)も参加しています。


お悩みHunter

何となくの付き合いに疲れる

  高校1年生です。同じ中学校の子が1人もいなくて、入学式のとき話しかけてきた子のグループと、何となく付き合うようになりました。でも、その子たちの話題についていけなくて、疲れてしまいます。かといって、付き合いを断る勇気もありません。どうしたらいいでしょうか?(16歳、女性)

いろんな人に話しかけてみて

  このような状況で「何となく」付き合いが始まることは、よくありますよ。

 あの人とこの人は私と趣味も同じだし、気も合いそうだから付き合ってみよう、なんて慎重になっていたら、いつまでたっても誰とも話もできません。学校でのちょっとした動きもやりにくいのではないでしょうか。どうも話題についていけない、疲れてしまう、ということがわかったのも、この間の交流があればこそですよ。

 実は、友達関係に変化が起きるのは、5月の連休明けからが多いものです。

 程度の差こそあれ、あなたのように友達関係の矛盾にぶつかった人たちが、授業や部活、学校行事などの「生活や活動」を通して、本格的に友達関係を組み直し始めるからです。

 いわば、4月段階は、誰でも「様子見」なのだと思います。

 今のグループの中にひとりでも気が合う人がいれば、ずっと関係を続けていけばいいし、「疲れ」てしまうようなら付き合いが続かなくても仕方ありません。

 つかず離れず様子をみながら、あなた自身がもっと自分から積極的にいろんな人に話しかけて、交友関係を広げてみてはいかがでしょう。その中にもっと気楽に付き合える「友達」が見つかるかもしれません。あまり焦って結論を急がなくてもいいように思います。


教育評論家 尾木 直樹さん

 法政大学キャリアデザイン学部教授。中高22年間の教員経験を生かし、調査研究、全国での講演活動等に取り組む。著書多数。


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