2009年4月7日(火)「しんぶん赤旗」

主張

NATO60年

軍事同盟が果たす役割はない


 NATO(北大西洋条約機構)が創設六十周年を迎えて首脳会議を開きました。米国の一国覇権主義の破たんが鮮明になり、国際協調をうたうオバマ米政権が登場したことで、NATOは当面、米欧の「亀裂」を取り繕ったかにみえます。しかし、「核と通常戦力にもとづく抑止力を戦略全体の中核要素」とする軍事同盟は、その存在を合理化できないままです。

増派要請は空振り

 首脳会議の焦点がオバマ政権が発表したアフガニスタン問題の新戦略です。軍事一辺倒で「勝利」できないことが明らかになる中、アフガン国民の支持獲得や地域的・包括的な取り組みが重要だとして、軍事・民生の両面で関与を強めようというものです。

 欧州諸国は歓迎を表明しながらも、米側の期待に反して増派には消極的です。応じた一部の国も八月のアフガン大統領選挙まで、目的も治安部隊の訓練などと役割を限定しています。欧州各国に高まるアフガン戦争への批判が反映しています。

 イラク戦争で米国は、戦争に反対するドイツやフランスを「古い欧州」だと非難しました。この対立が依然解けていないことが、アフガン問題で示されています。

 首脳会議は、来年までにNATOの「新戦略概念」を改定することを確認しました。その基本となる「新たな脅威」には、テロや大量破壊兵器の拡散などと並んで、コンピューター・ネットワークへの攻撃やエネルギー安全保障、気候変動などを挙げています。

 これらは政治的な対応こそが求められる課題です。テロに対しては軍事力ではなく警察力で対応することが必要です。アフガン戦争の教訓もそこにあります。

 軍事同盟は域外に敵の存在を想定するものです。NATOは六十年前、米国を盟主として生まれ、「東西対立」のもとで軍拡を競いました。しかし、二十年前にはソ連崩壊に至る過程で「もはや存在理由がなくなった」と指摘されていました。

 NATOはこの問題を域外行動で乗り越えようとしました。十年前にはコソボ問題で、主権国家に対して初めて空爆などの軍事作戦を行いました。国連安保理の明示的な支持がなく、国連憲章に反すると指摘されています。八年前の米同時テロに際しては、集団安全保障を規定した条約第五条を初めて発動し、欧州外のアフガンへの派兵に道を開きました。

 しかし、この過程はNATOに新たな矛盾を引き起こしてきました。アフガン問題をめぐる亀裂はそれを象徴するものです。

平和の地域協力を

 覇権主義が安全を脅かした時代は終わろうとしています。そのもとで外部に敵を求めない平和の地域協力が安全保障にとって重要な役割を果たしています。ASEAN(東南アジア諸国連合)が推進する東南アジア友好協力条約(TAC)には域外を含めた二十五カ国が加盟し、米国も加盟の意思を表明しています。南米でも協力が発展しています。

 NATOの「新戦略概念」の改定は「敵」を新たに探そうとするものです。非合理な軍事同盟を延命させようとするものです。

 世界が変わる中で、軍事同盟に未来はありません。延命の試みは新たな矛盾を生み出すだけです。


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