2009年3月28日(土)「しんぶん赤旗」

解説

温室ガス削減 政府委・中期目標案

「野心的目標」に程遠く


 政府の中期目標検討委員会が二十七日に示した二〇二〇年までの温室効果ガス削減の中期目標案は、一九九〇年比で4%増や0%増の案も含み、温暖化防止のために先進国に求められる「野心的目標」に程遠いものです。25%削減案も示されていますが、失業増など“経済成長”の阻害が過度に強調されています。

 日本は、議長国を務めた一九九七年の京都会議で、〇八―一二年の間に九〇年比で6%削減の義務を負っていますが、達成できていません。二〇年までの目標で、それさえ下回る数値を示すのは、温暖化防止をめざす世界の取り組みをあざ笑うような姿勢です。

 日本はすでに五〇年までに世界の排出量を半減し、日本は60―80%削減するとの目標を掲げていますが、検討委の目標案は、それとの整合性にも疑問が出る内容です。

 こうなるのは、同委が環境NGOなどの代表を参加させず、全人類的課題であるべき温暖化防止を重荷としかとらえられない大企業の立場に縛られているからです。

 すでに欧州の産業界は、“温暖化対策は早ければ早いほど経済にプラス”という英国のスターン報告(〇六年)の勧告を受け入れ、積極策に転じ、この考え方は米大企業にも急速に広がっています。ところが日本経団連などは、“3%削減でさえ一世帯で百五万円の負担になる”との意見広告を全国紙に出し、「温暖化対策をとれば損するだけだ」との考えを国民に押し付けようとしています。

 温暖化対策が進む欧州では、▽温暖化による被害を最小限度に抑えることができる▽早めに策を講じれば講じるほど対策経費は安上がりになる▽再生可能エネルギーへの転換で石油・天然ガス輸入などの経費が減る▽雇用が増える―など温暖化対策の効果を包括的にとらえています。

 その立場から野心的な削減目標を掲げ、▽再生可能エネルギー普及のための電力固定価格買取制度▽政府と企業の公的削減協定▽環境税や排出量取引といった促進策―などを導入し、削減実績を挙げています。

 ところが検討委では、自然エネルギーの大幅導入などを最初から想定外とし、必要な規制策もとらないことを前提にした議論が、堂々と展開されてきました。提示された案では、自然エネルギーの普及率は最大で14%にとどまる一方、現在31%の原発の比率を40―51%へと大幅に増やす点で共通しています。

 一三年以降の温暖化対策の新たな国際協定の年内合意をめざし、二十九日からドイツのボンで国連の特別作業部会が開かれます。この会合に向けた議長の論点案は、先進国全体の中期目標として引き続き「25―40%削減」を掲げています。政府は、この線に沿った目標を、できるだけ早く決めるべきです。(坂口明)


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