2009年3月6日(金)「しんぶん赤旗」

主張

定額給付金

「さもしい」のは政府与党だ


 総額二兆円の定額給付金の財源法など、二〇〇八年度の第二次補正予算の関連法が成立しました。

 定額給付金について麻生太郎首相は昨年十月末の発表当初、「全所帯について実施します」と言っていました。それが数日後には「豊かな人に出す必要はない」、一カ月後には「(金持ちが給付金を受け取るのは)さもしい」とのべ、「哲学、矜持(きょうじ)、考え方の問題だ」とまで言い切りました。

 ところが年が明けると「高額所得者も盛大に使っていただきたい」と一変し、最近は「受け取ります。直ちに使って消費の刺激にあてる」と表明しています。

百年に一度の自己実現

 首相の迷走は、定額給付金には哲学も理念もなく、あるのは選挙目当ての党略だけであることを、みずから立証しています。

 政府の財政制度等審議会でさえ批判が続出しました。「消費効果はおそらくほとんどないだろう」「(給付金は)緊急支援と言えるか、全く言えない。例えば(二次補正の)医療対策は、たらい回しで人が死んでいるというのに、たった百十八億円だ」

 定額給付金の元祖・一九九九年の地域振興券は、実施前から「天下の愚策」と批判され、実施後は現職財務相が「むだが多かった」と失敗を認めています。いわば札付きの「ばらまき」政策です。

 二次補正の衆院通過後の世論調査(「読売」)でも、75%の人が定額給付金を「評価しない」と答えています。生活が苦しいにもかかわらず、大多数の国民が厳しい目で見ているのは、選挙目当ての「さもしい」ばらまきだと見抜いているからにほかなりません。

 なにより、自公が小泉内閣以降に国民に押し付けてきた増税や社会保障の負担増・給付カットは、年間で十三兆円に上ります。自公政府がレールを敷こうとしている消費税増税で5%の税率引き上げが強行されれば、さらに年十三兆円の国民負担増です。まさに「ばらまき一瞬、増税一生」です。

 こんな定額給付金が景気対策の最大の目玉になっていることそのものが、日本経済の立て直しに対する麻生内閣と自公の姿勢、ふまじめさを象徴しています。

 自公は麻生首相を先頭に「百年に一度の経済危機」と繰り返してきました。危機感をあおるだけあおっておいて、現実の政策運営では党利党略にうつつを抜かしています。その結果「百年に一度」を口実に、巨額の内部留保を持つ大企業が率先して派遣・下請け切りに走り、政府は現行法にも違反した不当解雇、下請けいじめを許しています。これが家計と国内需要を一気に冷やし、景気悪化をかつてないほど深刻にしています。

 麻生内閣と自公のやり方は、「百年に一度の経済危機」を自己実現させる最悪の政策運営です。

内需主導へ抜本転換を

 「最大の景気対策は政権交代」と言い、“対立”の背後で自公となれ合って徹底審議を回避し、政府予算案の衆院通過に手を貸した民主党も重い責任が問われます。

 求められているのは「アメリカ頼み」でも「外需頼み」でもない、「内需主導」の経済への大きな転換です。財界言いなりに大企業の利益を優先し家計の負担を増やす自公路線を改め、あらゆる分野で暮らしに軸足を置いた政策運営に根本から切り替えることです。



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