2009年2月26日(木)「しんぶん赤旗」

オバマ米大統領 初の施政演説

エネルギー・医療・教育に集中投資

経済再生を訴え

アフガン新戦略、イラク終結も


 【ワシントン=小林俊哉】オバマ米大統領は二十四日、上下両院の合同会議で初の施政方針演説を行いました。米国の経済・金融危機がいっそう深まるなか、エネルギー、医療、教育など幅広い課題をとりあげて経済再生の打開策を語り、国民の協力と団結を訴えました。


 オバマ氏は、十七日に成立した七千八百七十二億ドルと過去最大規模の財政出動策について、景気刺激のための「第一歩」にすぎないと強調。「信用危機が解決されない限り、回復はない」として、国民から批判がある銀行救済策に理解を求めました。

 同時に、エネルギー、医療保険、教育分野への集中的投資で経済成長をはかる長期策を強調しました。

 また、四年の任期中に財政赤字を半減すると強調。入札なしの契約の廃止や「時代遅れの冷戦型兵器システムに税金を無駄に使わないよう国防費を改革する」こと、農業大資本への補助金廃止などで、二兆ドル規模の歳出圧縮を主張しました。

 外交政策では、中東問題の特使を指名したことのほか、「アフガニスタンとパキスタンに関する新しい包括的戦略を構築する」と主張。イラク戦争については、「責任をもって終結させる」と述べました。また「古い同盟を強化し、新しい同盟を築く」と表明しました。

解説

「未来のための責任」どう果たす

 オバマ米大統領は二十四日夜の上下両院合同会議での施政方針演説で、米国が抱える経済困難を正面にすえて、「いま必要とされていることは、直面している課題に大胆に立ち向かい、未来のための責任を果たすことだ」と国民に訴えました。

 一月の就任演説で強調した「米国の再生」「新たな責任の時代」を再度打ち出した内容です。

 オバマ氏は課題として、改革が迫られている諸政策を挙げました。イラク、アフガニスタンで七年に及ぶ戦争が膨大な戦費負担を生んでいることに言及。地球規模に広がった経済危機に対応するために、国際的金融システムの安定化に向けた方針も語られました。

 イラク戦争の失敗で、米国の軍事覇権主義に米国内から批判が噴出した上に、世界での孤立を深めました。「カジノ資本主義」はバブル崩壊とともに破たんし、米国型資本主義の信頼も地に落ちました。いずれも、ブッシュ前大統領時代に米国だけの利害を優先させた政策の結果でした。

 米国への信頼が揺らぐなか、危機の中から米国をどう立て直していくのか。オバマ氏は「経済の激動期や変革の時代を、この国は果敢な行動と大規模な計画で乗り切ってきた」と述べ、歴史的な事例を引いて、困難を乗り切ってきたことを強調しました。

 同日発表されたワシントン・ポスト紙とABCテレビの世論調査によると、今月成立した総額七千八百七十二億ドルの景気対策法については、62%の人が地域経済再生につながると期待を寄せています。同時にいっそうの景気対策が必要と答えている人も63%もいます。

 オバマ氏が今後、イラクやアフガンをはじめとする外交・軍事の課題をどうすすめるのか、雇用創出、金融や住宅市場の健全化、落ち込む製造業の活性化など米国経済再生につながる諸政策を実らせていけるのか。国民の期待とともに、厳しい目も注がれています。(ワシントン=西村央)


 施政方針演説 米大統領は議会会期の冒頭に一年間の施政方針を示します。これは通例、憲法第二条の規定に基づく「一般教書」で行われ、上下両院合同会議で大統領が演説します。ただし大統領が交代した場合、「一般教書」の提示は旧大統領の任務とされるため、新大統領は別途、施政方針演説を行うことが慣例です。同演説に関するきまりはありません。


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