2009年2月21日(土)「しんぶん赤旗」

ホンダ期間工切りの非情(3)

どこいった「人間尊重」


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(写真)ホンダが期間工に書かせている退職願

 「たった二カ月でクビか。だったら何でオレを雇ったんや」

 鈴鹿製作所(三重県鈴鹿市)で働く男性(25)が怒りを抑えられない様子で語ります。昨年十二月に入社。二月二十二日で雇い止めになります。男性に与えられた仕事は工場内の掃除だけ。入社当初からクビが予定されていたような仕打ちです。

退職願の強要

 この男性は、ホンダに退職願の提出を迫られたと訴えます。

 期間工全員雇い止めの方針を示したホンダが期間工に配布しているのは「期間契約社員退職願」と題する文書。退職日の二週間前までに「本人自筆にて記入・押印の上、各所属へ提出」と求めています。

 「バカにすんな。退職を願ってるわけがないやろ」

 男性が提出せずにいると、職場の上司から「総務にそう報告していいんだな。慰労金(男性の場合五万円)がもらえなくなるけどいいんだな」と迫られました。大阪府内の住まいを引き払って寮に移り住んできた男性に帰る場所はなく、加入期間が短いため雇用保険(失業手当)も出ません。少しでも資金を確保したい男性は、渋々署名に応じました。

 ホンダは創業以来、「人間尊重」を基本理念にかかげています。福井威夫社長も毎年、新入社員への講話で「理念を尊重し、次の世代に引き継いでほしい」と語ってきました。

 しかし―。鈴鹿製作所で三年間働いた四十代男性は「最低限の法律すら守れない企業だ」といいます。

 ホンダは正社員には就業規則を冊子で配る一方、期間工には「期間契約社員就業規則」を見せてきませんでした。これは労働基準法一〇六条(法令等の周知義務)違反です。

労基署も指導

 三重県津労働基準監督署は一月十三日、鈴鹿製作所に検査に入り、是正を指導。一月二十八日から鈴鹿製作所は就業規則を閲覧可能にしました。検査を受けていない残りの四製作所では「以前から閲覧させている」(本社広報担当者)と、違反を認めていません。

 埼玉製作所(狭山市)で十年以上働く四十代男性は「就業規則なんてあったのか」と驚き、ホンダの説明はウソだと証言。栃木製作所で十一年働いた男性も「一度も見たことがない」といいます。

 埼玉、鈴鹿の期間工に聞くと、ほかにもさまざまな権利侵害があったといいます。

 ▽祖母の葬儀の日に「出てこい」と言われて働かされた。特別休暇もなく、欠勤の可否も上司の意向しだい(埼玉、二十代男性)

 ▽自分のチームは契約書を正社員に預けさせられた。日常的に契約内容を確認できなかった(埼玉、別の二十代男性)

 ▽二〇〇七年末まで「寮には住民票を置くな」と言われ、選挙に行けなかった(鈴鹿、三十代男性)(つづく)



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