2009年1月21日(水)「しんぶん赤旗」

主張

2兆円定額給付金

砂漠にしみこむ水にするな


 第二次補正予算案の審議が参院で始まっています。

 焦点の二兆円の定額給付金について、麻生太郎首相は衆院と同じ答弁を繰り返しています。「生活支援策、消費落ち込みを防ぐという二つの意味で有効だ」「今の経済状況を考えたときに、有効なものになる可能性が高い」―。

 説得力のかけらもない説明で、二兆円もの大切な財源を費やすことは許されません。

過去50年でも異常

 日本経済の体質を外需頼みから内需主導に転換する必要があることは、首相を含む幅広い共通認識となっています。「内需主導」の鍵を握るのは、企業の設備投資や住宅投資、公共投資など国内需要の中でも約六割と圧倒的な割合を占める家計消費です。

 その家計がなぜ冷え込んできたのか、どうすれば家計を温めて消費の安定を図れるのか。首相の言い分に説得力がないのは、定額給付金が、苦しい家計の実態について、まともに考えた節さえうかがえない対策だからです。

 最近の日本の家計消費は、過去五十年でも異常な低迷を示しています。GDP(国内総生産)統計で過去五十年の消費を見ると、前年度比で6%から10%も増えた「高度成長期」を除けば、3%から5%の増加が普通でした。一九九〇年代以前に2%を切ったのはわずか二回だけです。ところが、自民党が消費税増税、医療費値上げなど九兆円負担増を強行した九七年度に初めてマイナスとなって以降は、0―1%台の底ばいが常態と化しています。

 九七年度当時は雇用者の所得が毎年四、五兆円ずつ増加していましたが、消費にかかる消費税が消費を冷やす“効果”はてきめんでした。以後は人件費を削減する財界の戦略が家計の収入を減らし、社会保障の連続改悪や庶民増税が消費に回せる可処分所得を圧迫して家計消費を抑えています。

 とりわけ小泉内閣以降の負担増は過酷です。社会保障では医療・年金・介護の負担増、障害者の負担増、生活保護の切り下げ、後期高齢者医療の導入―。税金では配偶者特別控除の廃止、年金課税の強化、定率減税の半減・廃止―。〇一年度と比べると〇八年度は十三兆円、七年間の累計で五十兆円近い負担増・給付カットになっています。

 しかも自公政府は一一年度に消費税を再増税すると言っています。現実の負担増に加えて、将来も庶民を痛めつける大規模な負担増が続くと考えれば、消費が冷え込むのは当然です。一回限り、二兆円ぽっきりの給付金は砂漠にしみこむ一滴の水にすぎません。

食料品を非課税に

 定額給付金について各社の世論調査では、六割から八割の人が「やめた方がよい」「支給を取りやめて雇用や社会保障などに使うべきだ」などと答えています。

 国民は家計のやりくりに四苦八苦しています。それにもかかわらず、大多数の国民が給付金に反対していることを麻生内閣と自公は重く受け止め、選挙目当ての定額給付金は撤回すべきです。

 生活を応援し内需を温めると言うなら、負担増路線を根本から転換する必要があります。減税するなら、すべての低所得者に行き渡り、景気対策として最も効果が大きい消費税の食料品非課税こそ速やかに実施するよう求めます。



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