2008年12月31日(水)「しんぶん赤旗」

教科書 書き直し指示

韓国政府 「反米・親北朝鮮的」と主張

野党 “歴史ゆがめるな”


 韓国で近現代史の解釈をめぐる保守派と進歩派の対立が激化しています。二月に発足した李明博(イ・ミョンバク)政権は、高校の歴史教育の内容が「反米、親北朝鮮的だ」として是正を要求。韓国政府の樹立過程や歴代政権の問題点を指摘した一部教科書の記述について、半ば強制的に書き直させました。執筆者や野党は「歴史をゆがめるものだ」と強く反発しています。

 教育科学技術省は十八日、来年三月から各高校で使われる六種類の近・現代史教科書について、二百六カ所が修正・補完され、最終承認されたと発表しました。修正されたのは、日本の植民地支配に積極的に協力した“親日派”の処罰が不十分だったことをめぐる評価や、李承晩(イ・スンマン)、朴正熙(パク・チョンヒ)両政権に対する批判的な記述などです。

 同省は今年十月、教科書を出版する六社に、五十五項目の修正を勧告。十一月には修正が不十分だとして四十一項目の修正を指示しました。

 右派団体から「左傾化教科書」の代表格として攻撃されてきた金星出版社は、最多の三十三項目の修正指示を受けました。同社が執筆者の同意を得ぬまま、修正に応じたことに執筆者側が反発。修正は無効だとして裁判所に仮処分を申し立てる事態となりました。

 韓国では、一九八〇年代の民主化運動勢力が中心となった金大中(キム・デジュン)、盧武鉉(ノ・ムヒョン)両政権の下で、近現代史の再評価、過去の清算が進められました。

 保守勢力は、両政権の十年間で「左傾化が進展した」と批判。二月に李明博政権が発足し、保守政党ハンナラ党が与党になると、「左傾化」の修正を求める動きが強まりました。

 三月には、従来の歴史教科書を「自虐史観」だと批判する保守派の団体が「代案教科書」を発表。六月には、国防省などの政府機関、経済界を代表する全国経済人連合会でつくる団体が、二百五十三項目にわたる修正要求を提出しました。

 七月には、金道然(キム・ドヨン)教育科学相(当時)が、「偏った歴史教育で青少年が反米、反市場的な傾向を見せている」と発言。米国産牛肉の輸入反対運動が若者に広がった背景に「偏った歴史教育」があるとの認識を述べていました。

 李大統領は十二月二十二日、「国家のアイデンティティーをそこねる非常に幅広くて根深い状況がある」と発言。「確固とした国家観を確立する必要がある」と強調しました。

 韓国メディアは、金大中、盧武鉉両政権色を排除することがねらいと指摘しています。(中村圭吾)


 韓国の教科書検定制度 韓国では、小学校の全教科、中学・高校の国語、道徳、国史と一部の専門科目で国定教科書を使用。それ以外の大半の科目では、政府の検定を受けた民間出版社の教科書の中から各学校が採択する制度になっています。


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