2008年12月26日(金)「しんぶん赤旗」

国、住民排除を請求

米軍ヘリパッド反対座り込み

沖縄防衛局に抗議


 沖縄県の北部に位置する国頭(くにがみ)郡東村高江区の周囲に、米軍が新たに六カ所のヘリパッド建設を強行しようとしている問題で、沖縄防衛局が、建設予定地前で座り込みを続けている住民ら十五人を相手取り、通行妨害禁止の仮処分を那覇地裁名護支部に申し立てていたことが、二十五日までに明らかになりました。

 申し立てを受けた住民らは同日、国の不当な弾圧に抗議し、申し立てを取り下げるよう沖縄防衛局を訪れました。

 防衛局の職員は「審尋でお話をうかがう」などと申し入れを拒否。門前払いの対応に住民らは「県民の生活がかかっている」「私たちはただ静かに暮らしたいだけだ」などと訴え、支援に駆け付けた約五十人の市民らとともに防衛局前で緊急集会を開いて抗議しました。

 緊急集会に参加した日本共産党の嘉陽宗儀県議団長は「(国が訴えてきたのは)沖縄県民のたたかいに追い詰められ、司法の力を借りなければ基地はつくれないと判断したからだ」と強調。基地建設反対の声をさらに広く県内外に呼びかけていこうと訴えました。

住民の会が会見

 「ヘリパッドいらない住民の会」共同代表の伊佐真次、安次嶺現達両氏らは同日県庁で記者会見し、国の理不尽で不当な申し立てに抗議し、取り下げを求める声を「全国各地で起こしてほしい」と支援を呼びかけました。

 防衛局が同地裁に申立書を提出したのは十一月二十五日。双方の事情を聞く審尋期日は来年一月二十七日となっています。申し立てを受けた住民のなかには八歳の子どもまで含まれています。


解説

ヘリパッド住民排除請求

反対運動への攻撃

 沖縄防衛局の「申し立て」の狙いは明白です。米軍いいなりの基地建設は許さないという県民に支えられた高江の住民運動の前進を、「裁判」という力で分断、切り崩そうとする強権的で不当な攻撃です。国と沖縄防衛局は直ちに取り下げるべきです。

 ヘリパッド建設計画は、日米両政府が一九九六年に「県民の負担を軽減」するとして北部訓練場北側部分の返還合意の中で具体化。しかし実態は東村にある十五カ所のヘリパッドに加えて、新たに六カ所を高江区内に建設するという「負担の強化」です。

 しかもヘリパッドは高江区の集落を取り囲む配置です。日本共産党の赤嶺政賢衆院議員の質問に政府は「米軍の運用上のニーズを勘案して決めた」(二〇〇七年三月二十七日の衆院安保委員会)と答弁。住民の安全よりも米軍優先の計画であることを認めています。

 高江地区は区民大会で建設反対を二回も決議しました。「平穏な生活が脅かされる」「ヘリの墜落などの事故が怖い」などは当然の声です。沖縄県が本土復帰した七二年以降だけでも北部訓練場周辺で米軍ヘリが六機墜落し、米兵十八人が死亡し、一人が行方不明になっているからです。

 建設反対への県民の共感の土台には「やんばる(県北部)の自然」があります。高江区を含む一帯が亜熱帯性降雨林のもとで育まれた生物多様性の宝庫です。ヤンバルクイナ、ノグチゲラなどの固有種や絶滅危惧(きぐ)種、貴重種が生息、世界遺産登録を求める声もあります。

 さらに予定地は、福地ダムなど五つのダムが地下水で結ばれ、沖縄本島の生活用水の60%を供給する貴重な水源地です。

 沖縄防衛局が「通行妨害」とする住民の座り込みは、環境調査抜きなどの無法工事に抗議し、監視するために「ヘリパッドいらない」住民の会が〇七年七月二日から始めました。現在までの約一年半に参加した住民や県民は一万人を超えています。(山本眞直)



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