2008年12月20日(土)「しんぶん赤旗」

主張

農水省農地改革プラン

農業再生に役立つ農地制度に


 農水省は「食料供給力の強化」を掲げ、一般の株式会社による農地の賃借を進めるとした「農地改革プラン」を発表しました。

 戦後の農地制度は家族経営を軸にして、「自ら耕す」ものに農地取得の権利を認め、地域に定着した農業者が安心して農業に取り組めるようにする「耕作者主義」を基本としてきました。

 農水省の新方針はこれを掘り崩し、株式会社の農地所有へと道を開くもので、農地・農村にいっそうの荒廃をもたらしかねません。

農地の維持・活用を

 農地は食料生産の基盤であり、環境の保全にも大きな役割を果たしています。日本は国土が狭いうえ、山間・丘陵地が多く平地は少なく、農地と宅地や道路など他用途との競合が避けられません。農地の維持・活用には独自の仕組みが不可欠です。

 日本農業は農地の減少や荒廃、後継者難など深刻な事態に直面し、食料自給率はわずか40%にすぎません。世界的な食料不足が顕著になるなか、農地を有効に活用し、各地の条件にあった地域農業の発展をはかることがきわめて重要になっています。

 政府・自民党は国内農業を軽視し、財界や米国の意に沿って食料の外国依存を進めてきました。農政の転換はまったなしです。しかし、政府と財界はその政策を反省せず、農業危機の原因を経営規模の零細性と家族経営に求めています。その打開策として農地制度の解体をもくろんでいるのです。

 農水省の「農地改革プラン」は耕作放棄農地の「解消」をめざすとして、農地の所有と利用との分離が必要だとしています。その上で貸借は一般の株式会社にまで認めるといいます。家族経営の共同を保持するため食品関連事業者らに制限されてきた農業生産法人への出資規制も緩和します。

 財界は「企業型農業経営の展開」を掲げて、株式会社の農地取得に対する規制を撤廃するよう要求してきました。

 これを受けて、政府・自民党も農地の転用規制を緩和し、「自ら耕す」ことを基本とする農地制度を次第に骨抜きにしてきました。農業生産法人参加者の農業従事義務を緩和しました。

 耕作放棄の多い地域では、株式会社が市町村と契約を結んで農地を利用できるようにしました。しかし、耕作放棄農地には面積が狭いなど悪条件も多く、企業的経営が引き合う保障はありません。二〇〇五年に賃借による農外企業の参入が拡大され、全国で二百八十一社(〇八年三月現在)が進出しましたが、赤字経営が多く、すでに撤退した例も少なくありません。

生産に励める政策こそ

 日本共産党は三月発表の農業再生プランで、株式会社の農地取得の解禁に反対することを明確にしています。企業参入が自由になれば家族経営との衝突が避けられず、有利な作物の生産から家族経営が駆逐されるからです。不採算を理由にした耕作放棄や利潤の見込める用途への転用など、地域農業を阻害する懸念も強まります。

 いま大事なことは「自ら耕す」という理念を生かしながら、農業生産法人など農業者の共同も生かした地域農業の発展に力を注ぎ、若者や意欲ある農業者が安心して農業に励める農業政策を確立することです。


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