2008年12月17日(水)「しんぶん赤旗」

主張

来年度の大学予算

3%削減を中止し抜本増額を


 来年度予算の政府の概算要求基準(シーリング)は、国立大学の運営費交付金や私立大学への国庫助成などの大学予算を、これまで毎年1%削減してきたのに加えてさらに2%削減し、合わせて3%削減するとしています。これに反対し、大学予算の増額を求める声が多くの大学関係者からあがっています。

大学の深刻な実態直視を

 自公政権の「構造改革」路線によって大学の教育研究基盤が脆弱(ぜいじゃく)化し、これ以上の予算削減は、「国民に対してはたすべき責任を負えなくなる」という立場からの強い訴えです。麻生太郎内閣はこうした声に耳を傾け、大学予算の削減を見直すべきです。

 国立大学協会が十月に文部科学相に提出した来年度予算の要望書は、「削減が続けば、今後数年を経ずして教育の質を保つことは難しくなり、さらには一部国立大学の経営が破綻(はたん)するばかりか、学問分野を問わず、基礎研究や萌芽的な研究の芽を潰(つぶ)すなど、これまで積み上げてきた国の高等教育施策とその成果を根底から崩壊させることとなります」とのべています。

 国立大学の運営費交付金は、毎年1%の一律削減によって、法人化後の四年間で総額六百億円余が削減されました。一橋大学十校分の運営費交付金に相当します。

 この結果国立大学では、「人員削減で授業が閉講したり隔年開講になり、卒業単位を四年間で取りにくくなった」「研究室や図書館で購入する図書、学術誌が激減した」「実験器具の更新ができない」「教員の研究費が大幅に減り、年間十五万円の研究室も少なくない」など、深刻な事態がひろがっています。

 このうえ来年度3%削減されれば、年間で三百五十億円以上の削減となり、大学にあたえる影響は甚大です。ある教育系単科大学では、3%の削減額は、各教員に配分する教育研究費の総額に匹敵するといいます。

 私立大学でも、国庫助成を1%削減したうえ、定員割れした私学には「不要だ」とばかり補助金がカットされてきました。来年度の3%削減は、「私立学校の健全な発達に資する」(私学振興助成法第一条)どころか、「お金を集められない私学はつぶれなさい」ということになりかねません。

 一方で政府は、競争的資金(評価によって配分する研究費)を旧帝大系大学や一部の大手私大に集中させています。まさに「弱肉強食」の大学政策です。多くの大学教員は、研究費獲得とそのための業績にかりたてられ、長期的視野にたって自由に、腰をすえた研究や教育にとりくむことが困難になっています。

大学予算の増額へ転換を

 国立、私立を問わず、財政難に苦しむ多くの大学の現状は、自公政権の「構造改革」路線が学術分野でも事実上破綻していることを示しています。にもかかわらず、なお3%削減に固執するとしたら、日本の学術研究と高等教育に対する国の責任を投げ捨てるに等しいといわなければなりません。

 大学は、学術研究と高等教育を担い、文化、産業の基盤をささえる大事な役割があります。その発展を考えるなら、何よりもこうした大学予算の削減を中止し、思い切って増額する方向に政策を切り替えることこそ必要です。



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