2008年12月16日(火)「しんぶん赤旗」
主張
日中韓とASEAN
東アジアの平和と協力拡大を
日本、中国、韓国の三カ国による首脳会議が十三日開かれました。三カ国首脳会議はこれまで東南アジア諸国連合(ASEAN)と日中韓三カ国との首脳会議(ASEANプラス3)の際に開かれてきましたが、今回初めて単独で開かれたものです。開催国を変えて毎年開くことも決まりました。
一方、ASEANは十五日にインドネシアで外相会議を開き、「ASEAN憲章」の発効を宣言しました。日中韓とASEANそれぞれの協力拡大の動きがあいまって、東アジア全体での平和をめざす地域協力を前進させる努力が望まれます。
障害になった日本外交
米国発の世界的な金融・経済危機が広がる中、今回の首脳会議では、韓国のウォン安をはじめとして経済問題が中心的に取り上げられ、日中韓の通貨スワップ(交換)を拡大することなどが合意されました。
同時に、三カ国首脳は「未来志向で包括的な協力を探求する」ことを表明し、政治、地域協力、文化、環境など広範な分野での交流拡大を確認しました。
日中韓三カ国の協力関係を発展させることは北東アジアの平和にとって不可欠です。
三カ国には共通する課題も多く、互いの協力を拡大する必要があります。その枠組みとして、三カ国首脳会議が単独で定期的に開かれることになったのは当然の流れです。
こうした協力関係の拡大にとって、これまで日本政府の政策が障害をもたらしたことを直視し、その転換をはかることが求められています。
その一つは、日本が過去の侵略戦争を真剣に反省し、二度と戦争を起こさないことを対外政策の基本にすえることです。
一九九九年以来、「ASEANプラス3」の機会に開かれていた日中韓三カ国首脳会議は二〇〇五年、小泉純一郎首相(当時)が靖国神社への参拝を強行したことで中断に追い込まれました。
今回の三カ国首脳会議は「未来志向」をうたい、歴史認識を問うことはありませんでした。しかし、麻生太郎首相自身も「靖国」派政治家の一人として、特異な歴史観を披歴したことが首相就任以前にはたびたびあります。
過去の侵略戦争への反省なくして、三カ国の協力を前進させることはできません。
自主的な地域共同体へ
日中韓三カ国がASEANとの関係をそれぞれ拡大する中で、日本は米国との同盟関係を基軸として対ASEAN関係の拡大を主導する姿勢をとり、他の国々に懸念を与えてきました。アジアにおける米国の利益を擁護する姿勢をとり、アジアでの自主的な経済的、政治的共同の動きを妨げてきたのです。
米国がアジアでの自主的な取り組みを妨害したことは、九〇年代後半に起きたアジア通貨危機にあたっての動きを通じても周知の事実です。
この間の世界的な金融危機は、経済面でも米国の一国支配が崩壊に向かっていることを浮き彫りにしています。
日本は世界の経済的、政治的な構造的変化を踏まえて、旧態依然とした政策を転換し、東アジアの自主的な平和の地域共同体づくりに貢献すべきです。