2008年12月14日(日)「しんぶん赤旗」

主張

政府緊急対策

消費税への固執が不安広げる


 麻生太郎首相が臨時の記者会見で追加景気対策「生活防衛のための緊急対策」を発表しました。

 緊急対策は、大銀行を応援するために公的資金の投入枠を十兆円追加、悪評の定額給付金、設備投資減税、住宅ローン減税など、発表済みの対策の寄せ集めです。

 首相はルール違反の期間・派遣社員切りをやめさせる踏み込んだ対策も、大銀行が先頭に立つ中小企業への貸し渋りを厳しく是正する姿勢も示しませんでした。

 社会保障削減の見直しは、「ぎりぎりまで努力してもらいたい」と“希望”をのべただけです。

対策と増税の支離滅裂

 「三年後に消費税引き上げをお願いしたいと過日申し上げた。この立場は全く変わっていない」

 年の瀬に不安を強める国民が切実に求めている雇用や中小企業の資金繰り、暮らしの対策は、政治の責任で一刻も早く実行する必要があります。ところが、国民の願いに応える中身もないのに臨時の記者会見まで開き、首相がもっとも力を込めてアピールしたのは消費税増税の決意です。与党税制大綱も数年後の消費税増税を盛り込んでいます。

 麻生首相は「百年に一度の金融危機」の「大津波」で、「経済の悪化は予想を超えるものとなっている」とのべています。生活防衛や内需拡大を強調しながら、暮らしと家計を痛めつけて内需に冷水を浴びせる消費税増税を打ち出すのは支離滅裂です。

 消費税増税が、どれほど家計と内需に打撃を与えるかは、税率を3%から5%に引き上げて不況に転落した一九九七年の経験で明らかです。麻生首相も「5%に上げたときは(景気悪化で)逆に税収が落ちた」と認めています(参院財政金融委員会、十一日)。

 首相は「景気が軌道に乗ったとき」が増税のタイミングだとのべています。しかし九七年四月の増税は、バブル崩壊後の不況から実質2・9%成長まで回復したところで実行されました。政府も月例経済報告で「景気は回復の動きを続けている」(九七年三月)としていました。にもかかわらず、消費税増税で家計消費・内需が一気に冷え込み、九七、九八年度と連続でマイナス成長に陥りました。

 これは政府統計がはっきり示している事実であり、政府にも否定しようがありません。

 それでも消費税増税を強行しようという経済財政諮問会議の議論は、ひどい混迷状態です。九七年の増税は「景気がほぼピークに近いところ」、つまり景気が落ちる直前だったから失敗したので、今度は「成長率が加速している局面で」増税すべきだというのです。

 九七年四月の増税前が「景気のピーク」になったのは、上昇していた景気が消費税増税という巨大なハンマーでガツンとたたき落とされた結果にすぎません。

庶民に負担押し付けず

 規模がいくら大きくても、国民の深刻な被害に真剣に手を差し伸べようとしない「対策」では役に立ちません。その上、麻生内閣の消費税増税の“決意表明”です。

 国民の不安をますます強める消費税増税は断念すべきです。年間五兆円の軍事費、年間七兆円の大企業・大資産家向け優遇税制にメスを入れ、これ以上庶民に負担を押し付けずに財源を生み出す道に踏み出すことが求められます。



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