2008年12月12日(金)「しんぶん赤旗」

投機のつけ税金で穴埋め

参院委採決 新金融機能強化法案

中小企業支援こそ急げ


 参院財政金融委員会で可決された新金融機能強化法修正案は、十兆円規模の公的資金を金融機関に投入し、最終損失は国民の税金で穴埋めするものです。深刻な景気悪化で国民が塗炭の苦しみに見舞われるなか、バクチのような投機に明け暮れた金融機関の救済を最優先で行うことに一片の道理もありません。

政局に終始

 年の瀬に向けて実体経済は、急速に悪化しています。

 「派遣切り」などで失業する非正規労働者は、厚生労働省の調査でさえ三万人を超え、大企業の正社員の解雇も急激に広がっています。また民間調査機関の東京商工リサーチが八日に発表した全国企業倒産状況では、今年の上場企業倒産は戦後最多を更新しました。今ほど、政治の姿勢と責任が厳しく問われる時はありません。

 ところが、麻生太郎首相は「貸し渋り、貸しはがしが雇用の問題につながっていく。早急に金融強化法案を成立させていただきたい」(五日の衆院予算委)と述べ、何よりも金融機関の救済に固執しました。一方、民主党も「郵政民営化凍結法案とセットでないと採決に応じられない」と実質審議を回避し、政局をめぐる駆け引きの道具にしてきました。

 そのため参院での実質審議はわずか十六時間余。悪化する中小企業の資金繰りをめぐる議論もほとんど行われませんでした。

 民主党のこうした態度の背景には、同党が公的資金投入に異論はなく、大本で法案に賛成していることがあります。鳩山由紀夫幹事長は「(金融強化法案の)改正案自体は必要だと考えている。採決をいたずらに引き延ばすつもりはない」(NHK、十一月三十日)と公言しました。

問題ただす

 こうした中、法案の問題を正面からただしたのが日本共産党です。

 大門実紀史参院議員は、不動産などの投機にのめりこんだ金融機関の責任を厳しく指摘。とくに、農林中央金庫は総資産六十一兆円のうち、リスクの高い有価証券などの資産運用が六割を占めたため、多額の損失を出したことを明らかにしました。

 投機的運用で生まれた巨額の損失のツケを「国民の税金で救済する道理はない」(十一月十三日の参院財金委、大門氏)のは当然です。

 また、日本共産党は、公的資金の投入が「資産運用で失敗しても、損失は税金で救ってくれる」という金融機関の体質をつくり、さらに投機にのめりこませることを追及。佐々木憲昭衆院議員は、銀行業界が、この十二年間で八十四兆円も中小企業への貸し出しを減少させてきたことを明らかにして、公的資金の投入を受けた金融機関が中小企業貸し出しを増やしていないことを浮き彫りにしました。

悪化の一途

 麻生首相が「中小企業の資金繰りも十二月、一月に窮することはない」(十一月二十七日)などと楽観論をふりまいている間にも、中小企業の資金繰りは悪化の一途をたどっています。東京商工リサーチ調査では、企業倒産の原因で「運転資金の欠乏」(前年同月比37・2%増)が著しく増加しています。

 政府が「中小企業融資の円滑化」を本気でいうのであれば、金融機関への指導の抜本的強化や、中小企業への信用保証を部分保証から100%保証に戻すなど、実効ある対策が不可欠です。(佐藤高志)



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