2008年12月11日(木)「しんぶん赤旗」

産科医療補償制度って?


 〈問い〉 産科医療補償制度とは? 日本共産党はどう考えていますか?(名古屋市・一読者)

 〈答え〉 産科医療補償制度は、分娩(ぶんべん)時の事故で子どもが脳性まひとなった場合に補償をおこなう制度で、2009年1月からスタートする予定です。

 これまで日本には医療事故の被害者を救済する公的制度が存在せず、“被害者が何の救済も受けられない”“長い期間、裁判をたたかわないと補償がされない”という状況でした。医療事故にかかわる訴訟の増加は医療従事者のストレスも増大させ、勤務医の退職、医師不足を加速する要因ともなっています。

 ヨーロッパ諸国などでは、政府の責任で恒常的に基金を積みたて、医療事故の被害者を救済する「無過失補償制度」が整備されています。医療事故の被害者・家族、日本医師会など医療関係者はこの間、“日本にも無過失補償制度をつくるべきだ”と政府に要求してきました。日本共産党も07年2月に発表した医師不足打開の緊急提案や選挙政策などで、「幅広い医療事故に対応する無過失補償制度の創設」をかかげてきました。「産科医療補償制度」は、このような声に押されてつくられたものです。ただ、来年1月からスタートする制度には、さまざまな問題点もあります。

 「産科医療補償制度」の対象となるのは、「通常出産にもかかわらず、子どもが脳性まひになった」ケースに限られます。出産が「通常」と見なされないケースや、障害が脳性まひ以外のケース、妊婦が医療事故の被害をうけたケースなどは、対象になりません。また、基金の運営は、民間保険会社に丸投げされており、営利本位に運営されるのではないかと懸念の声が出ています。スウェーデン、デンマーク、ニュージーランド、フランスなどの「無過失補償制度」は、いずれも国営あるいは公共企業体であり、営利企業にまかせるのは日本だけです。

 補償金を支給するかどうかを決定する「日本医療機能評価機構」に、厚生労働省の元幹部が天下りをしていることから、透明性・公正性にも疑問の声があがっています。

 日本共産党は、こうした制度の問題点を国会で追及し、▽対象の拡大▽民間保険への丸投げをやめて公的制度に改編する▽掛け金・補償金額の水準の再検討▽制度の透明性・公正性の確保などの改革を求めています(11月25日、参院厚生労働委員会、小池晃議員の質問)。現行制度の抜本的な見直しをすすめながら、諸外国のように幅広い医療事故に対応できる「無過失補償制度」の創設をめざすのが日本共産党の立場です。(谷)

 〔2008・12・11(木)〕


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