2008年11月29日(土)「しんぶん赤旗」

鳥島射爆撃場と訓練区域の一部

沖縄県議会が「返せ」

全会一致で決議・意見書


 沖縄県議会九月定例会が二十八日に開会し、米軍鳥島・久米島両射爆撃場と米軍訓練区域(ホテル・ホテル訓練区域)の一部返還を求める決議・意見書が全会一致で可決されました。


 県漁業協同組合連合会など漁業者からの強い要求を受け、日本共産党の玉城ノブ子県議が九月定例会代表質問で返還を強く求めていました。これに対し、仲井真弘多知事は同返還を「日米両政府に強く求めていきたい」と議会の場で初めて表明していました。

 決議・意見書は、鳥島が米軍による長年の実弾射撃の結果、原形をとどめないほど破壊され、劣化ウラン弾による環境影響も懸念されると指摘しています。

 また、カツオ、マグロ、ソデイカ、モズク養殖などの好漁場となっている本島周辺海域・沿岸域に行くのに、訓練水域のために迂回(うかい)を余儀なくされるなど、近年の燃油価格高騰のあおりで漁業者の経営は厳しい環境下にあるとして、漁業者の好漁場の確保と安全・安定的な操業を図るために返還を強く求めています。


解説

県民の願い受け止め米と交渉を

 決議は米軍と日本政府によって戦後一貫して奪われた、沖縄の豊かな海を漁民に取り戻す県民の総意です。

 在日米軍基地面積の約七割が集中する沖縄本島。海、空も例外ではありません。政府が米軍に提供している訓練水域は全国で四十九カ所、そのうち沖縄は二十九カ所です。その多くが実弾射撃なども伴う訓練空域と一体です。「見えない米軍基地」で豊かな漁場が奪われているのです。

 訓練水域では「米軍が訓練していないときは操業可能」と政府は言います。しかし訓練はほぼ連日行われており、操業は事実上できないのが実態です。

 一部返還を求めている「ホテル・ホテル」水域は沖縄本島に近く、周辺には漁協が浮漁礁(パヤオ)を設置するマグロやソデイカなどの漁場です。

 訓練水域外での操業中に米軍ヘリが漁民の頭上を旋回して妨害したり、周辺海域に米軍機が墜落するなどの事件・事故も後を絶ちません。

 今年四月には米海兵隊のハリアー戦闘機が同射爆撃場近くの海域に二百五十キロ爆弾二発を誤投下。場所は訓練水域から五・五キロも離れていました。一歩間違えれば大惨事です。

 漁場を奪われるばかりか、訓練水域を回避して別の漁場に遠回りするたびにかさむ燃料代の負担も深刻です。政府の米軍関係補償金も減額の一途です。「減る補償、増える危険、遠のく漁場。漁師らの三重苦」(「琉球新報」二十六日付)は限界を超えています。

 元漁協組合長が訴える「本当は全訓練水域を返還してほしい」は、全漁民の願いです。

 決議の可決を可能にした背景に県議選での与野党逆転という県政の様変わりがありました。とりわけ日本共産党は県議選で躍進した議席を活用、奮闘しました。漁民の願いを独自の政府交渉の場や県議会でとりあげ、決議実現に尽くしました。

 「一部返還」「鳥島返還」は最低限の要求です。日本政府は今こそ、県議会決議の重みを正面から受け止め、「現時点で米側に返還を求めることは難しい」(中曽根弘文外相)などのアメリカいいなりをやめ、ただちに返還のための対米交渉を具体化すべきです。(山本眞直)



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