2008年11月25日(火)「しんぶん赤旗」

主張

米軍訓練水域

返還めざし米政府と交渉せよ


 沖縄県の漁業関係者から沖縄周辺の米軍訓練水域の指定解除・返還を求める声が噴出しています。

 仲井真弘多沖縄県知事が初めて、県漁業協同組合連合会の代表らとともに外務・防衛両相と駐日米国大使に、鳥島・久米島両射爆撃場の返還と「ホテル・ホテル」訓練水域の一部指定解除を求めたのも、漁民に押されてのことです。好漁場を米軍に奪われているうえに、燃油高騰で漁業経営は深刻です。漁民が訓練水域を返せと要求するのは当然です。日本共産党は一貫して訓練水域・空域の返還を求めてきています。

不当な米軍への提供

 政府が米軍に提供している訓練水域は全国で四十九カ所、そのうち沖縄は二十九カ所です。その多くが実弾射撃などを伴う訓練空域と一体です。陸も海も空も自由に使えないのがいまも変わることのない沖縄の実態です。

 広大な米軍訓練水域は漁業振興の障害です。沖縄本島から比較的近いホテル・ホテル訓練水域は約二万平方キロメートルですが、漁民は完全に排除されています。価格の高いマグロやソデイカがいるのに、漁民は操業できません。政府は、訓練水域は米軍が訓練しないときには操業可能などといいますが、毎日午前六時から午後八時まで米軍が使用すると決められています。操業など不可能です。

 訓練水域内への立ち入りを禁止されているため、漁民が利益をあげるには遠方の漁場にいくしかありません。しかし、訓練水域内を通れないため数百キロメートル単位で遠回りさせられ、燃油代が余計にかかります。燃油高騰による負担が追い打ちをかけています。

 許せないのは、漁民がこれだけ苦しんでいるというのに痛みをわかろうともせず、訓練水域の返還を問題にもしない政府の態度です。中曽根弘文外相は「現時点で米側に返還を求めることは難しい」と県漁連らの要請を一蹴(いっしゅう)しました(十一日)。政府が米軍基地による県民の痛みを「軽減する」というのなら、こんな冷たい態度をとるべきではありません。

 鳥島・久米島の水域など領海内にある漁場を米軍に提供し、漁場を奪うのは主権国家のやることではありません。公海を日本政府が勝手に米軍の訓練水域に指定し、漁民を閉め出しているのも、国際法を無視した異常なやり方です。

漁民は黙っていない

 日本も批准している国連海洋法条約は、「公海の自由」を明記し、操業などの自由を保障しています。政府が「米軍が使用を許されている水域」といって、漁民を閉め出し、操業させないのは、海洋法条約に照らしても許されません。国連海洋法条約は公海でも二百カイリ内の漁業は沿岸国の権利と認めています。米軍のためにその権利を放棄する日本政府の異常な態度はとうてい認められません。

 政府は、米軍駐留が「日本防衛」のためだといって、基地の痛みを国民に押し付けてきました。しかし、在日米軍の任務が「日本防衛」でないことは、実態をみただけでも明らかです。海軍、空軍、海兵隊はどれも海外の紛争介入を任務とした“殴り込み部隊”です。米軍に訓練水域を提供し続ける理由はどこにもありません。

 政府はアメリカいいなりをやめて、訓練水域返還のための対米交渉にふみきるべきです。



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