2008年11月24日(月)「しんぶん赤旗」

主張

公的介護制度

受ける人も支える人も安心に


 年老いた夫婦や親子で支えあう「老老介護」、認知症になっても頼れる人がいない「認認介護」、肉親の介護のため、仕事もやめ、結婚もあきらめざるをえない人も少なくない…家族介護の深刻さは身につまされるものがあります。一人暮らしなどで介護してくれる人がいない高齢者も増えています。

 そうした人に少しでも支援の手を差し伸べることを宣伝文句にした介護保険など公的介護の制度が、利用者・高齢者への利用サービスの抑制と、介護事業者の経営難・人材流出で、いま“二重の危機”に直面しています。

「保険あって介護なし」

 全国の医療関係者でつくる全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)はこのほど、介護保険の利用実態と制度改善の課題について、全国各地の医療・介護事業所での事例調査の報告をまとめました。

 「介護保険料を納めているが、利用料負担ができず、必要な介護サービスが使えない」「介護していた娘が病気になり(母親の)入所施設を探すが、適当な施設が見つからない」「介護認定の更新で、要介護度が引き下げられた」…報告書には、七百二十八例もの深刻な実態が満載されています。

 介護保険利用者の多くは、重症化や介護する人の病気などやむにやまれぬ事情で、施設や自宅での介護サービスを求めています。ところが現在の制度は、その願いに応えきれていません。まさに「保険あって介護なし」です。

 介護保険は二〇〇〇年からスタートしました。四十歳になれば介護保険に加入し、加齢による病気や六十五歳以上の高齢者で介護が必要になれば、その程度に応じ、一定の負担でサービスが受けられるというものです。当初から問題は指摘されていましたが、いっそう使いにくくなったのは、〇六年から全面実施された、自民・公明ばかりか民主党までが賛成した制度改悪のためです。

 もともと不足していた介護施設は食費・居住費の全額自己負担で負担が急増しました。軽度と認定された人から訪問介護や通所介護が取り上げられました。介護予防や保健福祉の事業が介護保険に吸収されましたが、公的な責任と財政負担は後退し各地の介護予防事業は閑古鳥が泣く状態です。介護の総費用を抑えるため介護事業者への報酬が削減されたため、経営が悪化し労働条件は劣悪になり深刻な人材不足が広がっています。

 いまや介護保険制度は、国民的な存在意義という点でも、制度を支える人材という点でも、土台がゆらぐ深刻な事態です。介護を必要としているすべての人の人間らしい生活を支える介護サービスを実現し、介護を受ける人も、支える人も、安心できるようにすることは、一刻を争う課題です。

まず国が責任果たして

 来年四月からの介護報酬の三年ごとの見直しに向け、いま国でも地方でも検討が進んでいます。厚生労働省も「安心と希望の介護ビジョン」検討会などで検討してきました。しかし、国が地方任せ、民間任せの態度を改め、公的責任をしっかり果たさなければ「安心」も「希望」も実現しません。

 日本共産党は、国庫負担を増やし保険料・利用料を引き下げる、自治体への給付適正化事業を改める、介護報酬を大幅に引き上げるなどを、強く要求していきます。



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