2008年11月19日(水)「しんぶん赤旗」

主張

経団連の道州制試算

財界の身勝手が過ぎないか


 国の仕事は外交や防衛に限定し、それ以外の仕事は現在の都道府県を廃止して「道州」と「基礎自治体」に再編する地方に移していこうという「道州制」導入の動きが、政府や自民党、財界などで強まっています。自民党は来年の通常国会に、「道州制」導入のための基本法案を提出するとしています。

 そうした中、日本経団連がこのほど「道州制」導入についての新しい提言を発表し、「道州制」を導入すれば地方公務員の人件費削減や公共投資の効率化で財源がうくので、その分が道路や港湾の建設など産業基盤の整備に回せるという試算をまとめました。

仕事を押し付け人減らし

 「道州制」の導入で、福祉や教育など本来国がやらなければならない仕事を地方に押し付けておいて、地方の公務員と予算はさらに減らし、その分を産業基盤のために使おうというのですから、恐れ入った、身勝手な試算です。

 日本経団連は、「道州制」導入の効果を具体的に示したといいますが、確かにこれで、財界がなぜ「道州制」導入に熱心なのかがいよいよ分かりやすくなりました。国と地方のあり方を大転換するとともに、財界・大企業に新たなもうけを提供する「道州制」導入の策動は、直ちにやめるべきです。

 もともと、福祉や教育の施策を日本国民なら誰でも受けられるようにすることは、憲法でも定められた国の大切な仕事です。それを切り離し地方に押し付けようというのは、財界にとって安上がりで、アメリカと一緒になって「戦争する国」になることしか考えない政府をつくろうというものです。

 政府・自民党や財界は、「道州制」導入は「新しい『国のかたち』の創造」だとか、「究極の構造改革」だといってきました。日本経団連が今回の提言で示した試算は、財界が地方に押し付けようとしている国民の暮らしに密着した分野でも、大幅な後退しか考えていないことを浮き彫りにしています。

 試算は、「道州制」を導入し、「行財政改革」を進めれば、地方公務員の総人件費は一兆五千百三十億円、公共投資の効率化と合わせ五兆八千四百八十三億円減らせるといいます。これまで国がやっていた福祉や教育に関連した仕事を地方に押し付けて、どうしてそれほど減らせるのか。やろうとすれば、制度の大幅な後退は避けられません。

 しかもそうして減らした公務員の働き口はどうするのか。まさかトヨタやキヤノンが雇う保障があるわけでもないでしょう。試算は、「行財政改革」でういた財源をもとに、「道州」が道路や港湾といった産業インフラの整備をおこなえば雇用の創出にもつながるといいますが、結局甘い汁を吸うのは新しいもうけ口を手に入れる大企業だけということになりかねません。

住民本位の政治の前進こそ

 日本経団連は、「道州制」導入の効果が国民の目に見えるような形で示されなければ、「その推進力は高まらない」といいます。しかし、国民のなかで「道州制」導入への支持が広がらないのは、「道州制」が福祉や教育への国の責任を投げ捨てる悪い制度だからで、国民にその責任はありません。

 財界の身勝手な「道州制」導入論で国民を惑わすのはやめるべきです。国民の福祉を守り、「住民が主人公」の地方自治を前進させることこそ、国民は求めています。


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