2008年11月17日(月)「しんぶん赤旗」
民営化された年金基金
再国有化の動き
金融危機から生活守る
アルゼンチン
【メキシコ市=島田峰隆】南米アルゼンチンで、一九九〇年代の新自由主義政策のもとで民営化された年金基金を再び国有化する動きが進んでいます。同国の下院(二百五十七議席)は七日、再国有化のための法案を賛成百六十、反対七十五で可決。法案は今月中に上院に送られる予定です。
世界的な金融危機の影響から年金基金と国民生活を守ることが目的。フェルナンデス大統領が十月下旬に提案していました。
法案は、民間投資ファンドが管理している約二百三十億ドル規模の年金基金を国の管理下に移す内容。これにより全労働者に公的年金を保障します。新制度への移行の際には、その時点で受け取っている年金受給額を下回らない額を保障します。
民間投資ファンドは、国民から集めた掛け金の大部分を株や国債に投資してきました。しかし金融危機の影響もあり、この一年間で損失が20%程度も出たと報じられ、国民は不安を募らせていました。
フェルナンデス大統領は、「市場を誰も管理しないもとでは大損失が生まれる」と述べ、国有化に理解を求めました。与党議員は「(法案可決は)壊された連帯のきずなを再建するための歴史的な一ページだ」と強調しました。
野党側が「財産権の侵害だ」と強く反対したため、審議は十四時間近くに及びました。しかし国民の大半は国有化を支持しており、一部の野党議員は賛成に回りました。
アルゼンチンでは、新自由主義路線からの転換を掲げたキルチネル前政権が二〇〇三年に発足。それ以来、九〇年代に国際通貨基金(IMF)の指導で民営化された郵便や水道など基本公共サービスを再び国の管理下に置き始め、フェルナンデス現政権に引き継がれています。