2008年11月5日(水)「しんぶん赤旗」

社会保障を口実

政府“消費税増が必要”

15年には3.3―11%アップ


 政府の社会保障国民会議(座長・吉川洋東京大学教授)は四日の会議で、社会保障の給付と負担のあり方についての最終報告をまとめました。報告では「高齢化が進み、負担の増加が避けられない」として、消費税増税を念頭にした財源確保策へ速やかに着手することを求めました。麻生太郎首相が十月三十日に「三年後の消費税の引き上げ」と明言したのは、こうした議論を念頭においたもの。「社会保障」を口実にした最悪の増税論です。


国民会議最終報告

 報告は「必要な財源を安定的に確保していくための改革に真剣に取り組むべき時期が到来している」と明記。この日の会議で確認された「社会保障の機能強化のための追加所要額(試算)」では、すべて消費税増税が前提にされているように、「必要な財源」は消費税を念頭においたもの。「社会保障財源確保」を口実にした消費税増税に向けた論議を本格的に加速させることを狙っています。

 また、試算では(1)年金(2)医療・介護・福祉(3)子育てと家族支援の三つの分野での将来の財政支出の規模を消費税率に換算して例示(表)。二〇一五年の消費税率は現在より3・3―11%アップ(財源として約十兆―約三十六兆円)、二五年には6―13%アップ(約二十一兆―約五十兆円)になるとしました。

 消費税増税については、同三十一日の経済財政諮問会議で「消費税を含む税制抜本改革の道筋」(「中期プログラム」)の議論を開始しています。

表


 社会保障国民会議 福田康夫前首相が昨年12月に設置を提唱。日本経団連や連合、学者、医師などがメンバー。福田前首相は、消費税増税議論に野党を取り込む意図から、野党にも参加を求めました。しかし、日本共産党は「消費税増税の地ならしの場となる危険性が大きい」と拒否。他の野党も参加を断りました。


解説

大企業負担増 議論せず

社会保障国民会議・最終報告

 社会保障国民会議は四日の会合で、消費税増税の必要性を打ち出した最終報告をまとめ、役割を終えました。

 最終報告について、政府は、「制度改正に向けた議論の土台」と位置づけており、「社会保障のために消費税増税が必要」という議論を本格的にすすめるための基礎資料にする構えです。

 今年一月から議論を開始した社会保障国民会議の議論は、国民の社会保障にたいする不信・不安を意識しつつも、国民に負担をどう求めるかという議論が突出していました。

 五月に発表された公的年金財源についてのシミュレーションでは、基礎年金を「全額税方式」にして消費税増税を導入した場合、最大13%程度の税率引き上げが必要と試算する一方、企業負担は軽減されるという結果を示しました。

 この露骨な大企業有利の試算結果となった「全額税方式」には、委員からも疑問や批判が出されました。

 議論の大筋は、国民に負担増をどのように説明するかという視点や、医療や介護の「集中と選択」という観点からの「効率化」議論が中心でした。

 ヨーロッパ諸国と比較して少ない日本の社会保障費への企業負担をどのように増やすかという議論は、ほとんど出されることはありませんでした。

 日本の社会保障費がイギリス、ドイツ、フランスなどと比べても低すぎることが、いまの社会保障を巡る困難をつくり出していることは明白ですが、その財源をもっぱら庶民に求めることは筋違いです。社会保障に必要な財源をめぐる税や社会保険料の改革は、所得や資産に応じて負担する「応能原則」こそが必要なのです。消費税増税はこの原則に逆行します。

 同時に、社会保障財源議論で欠かせないのは、国民の生存権を守る社会保障制度の拡充を国の最優先の政策にすえるということです。日本国憲法第二五条は、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」として、国に社会保障の充実・向上を求めています。

 しかし、社会保障国民会議の十カ月間の議論では、国民の生存権保障という観点はみられませんでした。

 くらしの深刻さの実態からかけ離れた負担増路線は国民はとても受け入れられません。(宮沢毅)



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