2008年11月4日(火)「しんぶん赤旗」

主張

レッド・パージ「勧告」

国と企業は救済の責任果たせ


 日本弁護士連合会(日弁連)は十月二十七日、兵庫県内に住む三人のレッド・パージ犠牲者の「人権救済申立」について、「名誉回復や補償を含めた適切な措置を講ずる」ことを求めた勧告書を、国とレッド・パージを行った企業にたいして送付しました。

 国や企業はこの「勧告」を真剣に受けとめ、救済措置をとることが強く求められます。

戦後最大の人権侵害

 レッド・パージは日本が全面占領下にあった一九四九年から五〇年にかけ、アメリカと日本政府、財界、反共勢力が労働運動の右傾化と民主勢力の弱体化を狙い、日本共産党員とその支持者というだけで数万の労働者を職場から権力的に排除・解雇した事件です。戦後最大の人権侵害といわれる戦後史の汚点です。今回救済を申し立てた三人も五〇年に当時の電気通信省や企業を解雇されました。

 日弁連の「勧告」は、事実調査をふまえ、三人の解雇が「具体的な企業活動の妨害行為」などを理由にしたものではなく、「特定の思想・信条を理由とする差別的取扱いであり、思想良心の自由、法の下の平等、結社の自由を侵害するもの」と認定しています。そして、こうした差別的な解雇が思想信条の自由や法の下の平等、結社の自由を侵害するものであることをきびしく糾弾、「申立人らがすでに高齢であることを鑑みて、可及的速やかに、申立人の被った被害の回復のために、名誉回復や補償を含めた適切な措置を講ずるよう勧告」しています。

 日弁連が「勧告」と同時に公表した調査報告書は、「わが国においては過去における重大な人権侵害について、司法救済されることなく放置されてきたことが少なくない」と指摘。「たとえどれだけの時が経過しても…被害に苦しむ人々が現存し、救済を求める申立が…なされた以上、…放置することはできない」「当連合会は司法の一翼を担うものとして、人権の最後の砦(とりで)たる役割を果たさなければならない」と決意を表明しています。

 これまで最高裁はレッド・パージに関する占領軍の指示が「超憲法的効力」を有することを理由に、解雇を適法とする判決を下してきました。これにたいし日弁連は、「思想・良心の自由、法の下の平等は、連合国最高司令官をも規制する上位規範」「連合国最高司令官といえども、…侵害してはならない」と判断。「占領下とは言え、日本政府や企業には、人権侵害を回避するための可能な措置をとるべきであった」とし、とりわけ「一九五二年四月二十八日の占領終了・主権回復後は、自主的にレッド・パージを清算し被解雇者の地位と名誉の回復措置をとることが十分可能であったし、行うべきであった」と指摘しています。

思想差別を根絶するため

 日弁連が、「現在及び将来にわたり、職場において思想差別が繰り返されないようにするためにも、過去の人権侵害に対してその侵害事実と責任を認め、救済をしていくことは極めて重要」と強調しているのはとりわけ重要です。

 今日も絶えない人権や言論・表現の自由の侵害を許さぬたたかいと結んで、レッド・パージ犠牲者が求めている「名誉回復と国家賠償」要求の実現のために力をつくすことは、今日の日本にとって重要な課題です。


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