2008年11月3日(月)「しんぶん赤旗」

芸術団体の基盤強化につながる助成制度を

「事業をやればやるほどふえる自己負担」に批判


 十月十五日、日本芸術文化振興会と文化庁による来年度助成金の説明会が開かれ、来年度助成の「応募要領」が示されました。「応募要領」には、助成の対象団体や補助金額の限度など、公的助成の実際の方法が定められています。芸術団体からは改善が要望されているその問題点について、改めて見てみましょう。

無理な自己負担前提にした方式

 もともと芸術・文化活動への公的助成は、一九九〇年の芸術文化振興基金、九六年の文化庁による「アーツプラン21」によって、ようやく本格的に始まりました。しかし、欧米に比べ低い水準にとどまるだけでなく、助成方法が欧米ではみられない芸術団体の無理な「自己負担」を前提にした方式という問題をはらんでいます。

 「アーツプラン21」を始めたとき文化庁は、芸術団体の公演事業をまかなうさい、国が三分の一、寄付金などで三分の一、入場料収入が三分の一という考え方だとし、公演が赤字か黒字かは補助金の支出とは関係ないと説明していました。

 ところが、実際の募集をみると、公演への助成額は「自己負担金の範囲内、かつ支援対象経費の三分の一以内の定額」とし、また、「不足額すべてを満たすとは限りません」と限定されています。

 この「自己負担金」とは、記入例として、「団体会計からの充当」「○○銀行○○支店から借入」とあるように、芸術団体が助成事業以外で資金を調達しなければならないものです。その「自己負担」の範囲内でしか助成を出さず、しかも「すべてを満たすとは限りません」とあるわけですから、実際には芸術団体の赤字が積み上がる仕組みになっています。

 そもそも厳しい財政事情にある芸術団体を支援するはずの公的助成が、芸術団体の赤字を増やすようでは本末転倒です。こうした方式では、芸術団体の基盤は安定せず、専門家の生活と地位の向上に生かされません。

 芸術団体が努力しても赤字が出る仕組みにたいしては、「助成金を受けて事業を実施すればするほど、自己負担額がふくらんで、それが芸術団体やNPOの経営を圧迫する要因となる」(吉本光宏「再考、文化政策―拡大する役割と求められるパラダイムシフト」、ニッセイ基礎研所報二〇〇八年秋号)と問題が指摘されるようになっています。同論文は、「諸外国の公的な助成制度では、助成を受ける団体が活動を適切に維持できることが大前提」となっており、「日本とは、根本的な考え方が異なっている」とも指摘しています。

年間活動全体を考慮した制度に

 日本共産党は、この現状をふまえ、九月に発表した総選挙の文化分野政策で、芸術団体への公的助成の抜本的拡充を主張しています。そして、従来の助成方式を改善し、「自己負担」枠を撤廃することや、各分野の特性を考慮すること、また、芸術団体の自主的な年間活動全体を考慮した助成制度として充実させることなどを求めています。

辻 慎一(党学術・文化委員会事務局次長)


 *政策は、ホームページで掲載しています。(http://www.jcp.or.jp/seisaku/2008/20081003_senkyo-seisaku-bunya/18.html)。


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