2008年10月29日(水)「しんぶん赤旗」

フランスの住宅法「ベソン法」とは?


 〈問い〉10月1日付本欄「先進国の住宅政策は?」の記事で、フランスの「ベソン法」について書かれていますが、法律の内容や、住宅福祉政策の具体的な中身(例えば補助金がいくらとか)について教えてください。(東京・一読者)

 〈答え〉「ベソン法」とは、1990年5月に制定されたフランスの法律で「住宅への権利を実現するための法律」と邦訳されています。その第1条は、「住宅への権利を保障することは、国民にとって連帯の義務のひとつである」と宣言し、困窮者のための住宅を確保するために、(1)県行動計画を策定する、(2)住宅連帯基金(FSL)を設置する、(3)社会住宅供給組織や民間非営利団体と協労する、(4)困窮者の住居費を助成する、(5)民間賃貸住宅を活用するなどの具体的方針を打ち出しています。

 この法律制定の背景には、日本と同様、住宅に困っている人が多く、ある程度満足できる住宅に住む人と、困っている人の格差が拡大しています。国立統計経済研究所などの統計による分析では、極度の住宅困窮者は308万2500人、劣悪な居住状況におかれている者は567万人と推計しています。そのため、アベ・ピエール財団では、フランスの本土人口5930万人の15%近い人々への公的な住宅支援が緊急に必要であると指摘しています。

 最近特に問題になっているのは、親族・知人宅の居候問題です。家族から独立できない、友人宅に身を寄せざるを得ない青年失業者、実家を離れたが舞い戻った成人の子ども、離婚・別離した成人などが多く生まれています。

 日本でも「ワーキングプア」といわれる低所得の勤労者が増加し、特に若者が「ネットカフェ」を定宿にしている残酷な実態が社会問題になっていますが、同じ現象といえます。また戦後のフランスの住宅政策は、適正家賃住宅といわれる「社会賃貸住宅」の供給に重点をおいてきました。そのため、現在では、大規模団地を中心に「荒廃化」がすすんでいます。

 このようななかで、住宅建設・改善助成などから、家賃補助やローン補助への支援への移行がおこなわれ、それは、住宅予算全体の6割を占めています。

 日本でも住宅基本法が制定されましたが、「ベソン法」のような「住宅への権利」を明記したものではなく、逆に市場に住宅政策を委ねる内容となっています。公的な賃貸住宅も新規建設はほとんどおこなわれず、最近では公団(UR)住宅の10年で8万戸削減方針や雇用促進住宅全廃にみられるように公的責任の放棄という事態が進行しています。(高)

〔2008・10・29(水)〕


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