2008年10月21日(火)「しんぶん赤旗」
主張
追加経済対策
応援すべきは大企業か国民か
アメリカ発の金融危機は依然おさまらず、実体経済との悪循環も表面化しています。雇用情勢の悪化や消費の低迷など、国民生活の悪化も広がっています。麻生太郎内閣も来週には追加経済対策をまとめると、検討を急いでいます。
しかし、政府が検討しているのは、銀行への公的資金投入や大企業への設備投資減税、公共事業追加など、大企業向けの対策が中心です。いまもっとも急がれるのは不況や円高の犠牲が中小企業や国民にしわ寄せされないよう国民生活を守り、暮らしを立て直す抜本策をとることです。応援すべきは大企業ではなく国民生活です。
不況でも円高でも犠牲は
小泉純一郎内閣いらいの「構造改革」路線で、大企業のもうけはどんどん増えたのに、国民の暮らしはいっこうによくならず、国民にとっては「回復感」のない景気拡大が続いてきました。不安定雇用の拡大や社会保障の切りつめで国民の暮らしはむしろ悪化し、「貧困と格差」の拡大が日本社会の重大問題になっています。
アメリカ発の金融危機とそれにともなう実体経済の悪化は、それ以前から顕在化していた原油や食料品の価格上昇とあわせ、そうでなくても大変だった国民の暮らしを直撃しています。不況や円高の犠牲が国民にしわ寄せされるのを断ち切る対策をとらなければ、暮らしは破たんしてしまいます。
たとえば、銀行の貸し渋りや貸しはがしです。日本の大銀行は一九九〇年代の金融危機のあと、国民の税金から公的資金の投入を受け、税金もまけてもらって、みずほ、三菱UFJ、三井住友の三大メガバンクだけでも年間三兆円もの大もうけをあげてきました。ところが金融危機がはじまるとこれらの大銀行は中小企業などへの貸し渋りや貸しはがしを強め、資金繰りの悪化や経営破たんを招いています。貸し渋りや貸しはがしをやめさせることは急務です。
自動車や電機などの大企業も、「構造改革」路線のもとで非正規など安上がりな雇用を増やし、輸出を拡大して大もうけを続けてきました。ところが経済が悪化し始めると「いの一番」に雇用を切り捨て、下請け企業にも単価の切り下げや発注削減を押し付け大企業だけは生き残ろうとしています。
すでにトヨタ自動車などで期間工の削減などが始まっています。かつて一九七〇年代から八〇年代にかけての大企業の「減量経営」が労働者の雇用と中小企業の経営をいちじるしく悪化させ、個人消費を冷え込ませて不況を長引かせたように、大企業の身勝手なしわ寄せが広がれば、経済はますます落ち込むことになります。雇用確保や下請け保護の社会的責任を果たさせることが不可欠です。
日本経済の立て直しにも
アメリカ発の金融・経済危機に日本経済が揺り動かされる根本には、政府が国民生活をないがしろにし、国内需要は弱いまま外需に依存してきたことがあります。不況や円高の犠牲をしわ寄せするのをやめさせ、経済政策の軸足を大企業から国民の暮らしに移せば、日本経済の脆弱(ぜいじゃく)な体質を改善することにもつながります。
国民の暮らしのためにも日本経済の発展のためにも、いま何より求められるのは、大企業への応援政治をやめ、国民の暮らしを応援することにあるのは明らかです。