2008年9月30日(火)「しんぶん赤旗」
主張
麻生首相演説
党略ばかりで国民目線がない
麻生太郎首相の、就任後初の所信表明演説を聞きました。
前任者の福田康夫首相が政権を投げ出したことへのまともな反省も、行き詰まった政治をどう立て直すかの打開策もありません。所信表明演説といいながら、総選挙を意識し、民主党への質問を繰り返す異常なものです。“強く、明るく”などというだけで、国民の切実な声にまじめに取り組む姿勢も、国民が求める対策もありません。文字通り、党略ばかりで、国民の目線がありません。
反省も、具体策もなく
首相は冒頭、「演説に先立ち」として、福田首相の政権投げ出しによる「政治空白」や、「ごね得」発言などで中山成彬前国交相が辞任に追い込まれたことについて一言だけふれました。しかしそれは、事前に配布された原稿にはなく、あわてて付け加えたものです。首相がほんとうに反省しているのか、誠意を疑わせるものです。
首相の演説でとりわけ重大なのは、国民の「安心実現」や「暮らしの安心」の言葉はあっても、加速する不況や燃油価格の高騰、「食の安全」など、国民の切実な声に向き合い、こたえていく真剣さが感じられなかったことです。
政府の調査でも、六割近い国民が「生活が苦しい」とこたえています。政権発足にあたって各マスメディアの世論調査で麻生内閣の支持率は歴代内閣に比べて低い水準にとどまっていますが、その調査でも新内閣に取り組んでほしい政策は、「景気対策」「年金対策」「食品安全対策」「高齢者医療」などが上位を占めます。
首相は「実に忌むべきものは、不安であります」などといいますが、大切なのは、国民に不安をもたらしている原因は何か、どうしたら取り除けるのかを考えることです。原因にメスを入れず対策も示さないで、不安を持つなというだけでは、まるで不安を持つほうが悪いといわんばかりです。
多少ふれている対策も国民の求めるものとは程遠いものばかりです。首相は「改革を通じて経済成長を実現する」といいます。しかし、国民が批判しているのは、小泉純一郎政権以来の「構造改革」路線が生活を悪化させ、貧困と格差を拡大し、景気を悪化させていることです。
首相は七十五歳以上の老人を差別する「後期高齢者医療制度」についても、「この制度をなくせば解決するものではない」と、存続させる意向を鮮明にしました。汚染米問題でも、首相は企業や行政を批判するだけで、必要のないコメを輸入してきた自民党農政の責任には、一言の言及もありません。
争点明らかにし解散を
首相は、戦前いらい五十九人目の首相であることなどをあげ、「統治の伝統」に連なることを強調しました。首相が初出馬のさい、「下々の皆さん」と演説したエピソードは有名ですが、所信表明にも国民を支配の対象としか見ない目線がつらぬかれています。
所信表明演説の中身は、首相が外交問題で「日米同盟の強化」を繰り返したこととあわせ、これまでの政治を転換する意思がないことを浮き彫りにしています。
大企業本位・アメリカいいなりの政治の中身を根本から切り替えるため、国会論戦で争点を浮き彫りにし、解散・総選挙で国民の審判を突きつけることが不可欠です。