2008年9月24日(水)「しんぶん赤旗」

外資の環境汚染深刻

手口悪質14年間も

ベトナム


 ドイモイ(刷新)で市場経済と外資の誘致をすすめるベトナムで外資企業による悪質な環境汚染が明らかになり、世論を騒がせています。汚染を起こした台湾のうま味調味料メーカー「味丹」は、ベトナム経済への貢献で勲章も受け取った大企業で、処分の行方に注目が集まっています。

 九月上旬、資源環境省の調査団が南部ドンナイ省にある「味丹」の現地法人工場を立ち入り調査し、隠された排水設備を発見。同社が排水処理システムを通していない工業排水を、隣接するティバイ川に直接流していたことが判明しました。

 ベトナム政府の調査によると、同社は環境保護基準値を数千倍も上回る廃水を十四年にわたり川に流していました。排水設備を水のくみ上げ設備に見せるなどさまざまな偽装もされており、手口はきわめて悪質でした。

 同社は一九九一年に同省に工場を建設して進出。千八百人以上の従業員を雇用し、経済への貢献で三等労働勲章、輸出賞などを受賞しました。一方、近隣住民は十数年前から悪臭を訴え、同社を告発していました。

 ティバイ川は現在、環境汚染で「十五キロにわたり生物が住めない死の川」(ファム・コイ・グエン環境相)となっており、ことの悪質さに世論は怒り沸騰。ネット上では調味料の不買運動を訴える声が相次いでいるほか、法律違反を長年見抜けなかった行政への批判も出ています。

 グエン環境相は「味丹は(監督機関を)だました。法律違反は深刻。同社のすさまじい利益は私たちの環境を食い物にしたものだ」と怒りを隠しません。政府は厳罰で挑む構えで、行政処分のほか民事・刑事責任を追及する方針です。

 政府は経済発展を重視し外資の誘致をすすめてきましたが、今回は政府内から「場合によっては(同社は)ベトナムで操業しなくていい」と異例の発言も出ています。

 メディアは「環境汚染企業は無数にある」「環境汚染の処罰規定が甘い」とも指摘しており、監督強化や厳罰化などの制度改正につながるかも注目されています。(ハノイ=井上歩)



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