2008年9月18日(木)「しんぶん赤旗」

雇用促進住宅問題

佐々木憲昭議員に聞く

政府の方針変更 住民運動の成果


 雇用促進住宅の全廃をうちだす政府に対し、「居住権を守れ」という運動が大きく広がり、政府は方針変更を余儀なくされています。居住者と懇談し、政府交渉にもかかわってきた佐々木憲昭衆院議員に聞きました。


写真

(写真)坂部ケ丘雇用促進住宅の入居者と懇談する佐々木憲昭衆院議員=7月15日、三重県四日市市

 ――大きな問題として浮上してきた経過は…。

 九年前に、特殊法人「改革」の一環で、「雇用促進事業団」を解散し、新設した「雇用・能力開発機構」に業務を継がせたとき、住宅事業からの撤退が決まりました。

 ただ全都道府県に約三十五万人が入居し生活しているわけで、地方自治体に譲渡するか、できなければ耐用年数が経過した後、廃止する方針でした。

 ところが、小泉「構造改革」で、民間に積極的に売却することになり、入居者を退去させる方向へ方針が一大転換しました。

 その後、二〇三三年までに全廃する、二〇一一年中に三分の一を処分することが閣議決定され(〇七年六月二十二日)、さらに二分の一程度までに前倒しで廃止する閣議決定(同年十二月二十四日)もされています。

 こうした政府の決定にもとづいて今年四月、七百八十四の住宅が廃止対象にされ、五月から通知文書が配られ始めたのです。

強制せず約束

 ――最近、政府の方針に変化があったのですね。

 そうです。明らかに入居者のたたかいの反映です。私も、三重県四日市市などで入居者と懇談したのですが、はじめは国の強引なやり方に戸惑った人たちも、日本共産党の議員や地域の支部と協力して、居住権を守ろうと署名やアンケートなどを始めました。政府との交渉は七、八月に中央段階で八回行い、十県の代表が上京しました。日本共産党国会議員団は舛添要一厚生労働相に直接会って、廃止の中止などを要請しました。

 そうした交渉の中で、政府に「強制退去はさせない」と約束させました。機構は説明会開催後に契約終了の通告をしていましたが、これも八月から中断させました。退去期限も一年延期となり、今後七百八十四すべての住宅で説明会を開くまでは契約終了の通告をしないことになったのです。

道理ない政府

 ――退去を迫られた人も助かるし、全国の運動にも有力な条件が開けたわけですね。

 ええ。政府のこの方針変更は、住民の声に押されたというだけでなく、何より退去要求に大義名分がないことが根本にあります。

 二〇〇三年十月以前の入居者に適用される借地借家法では、貸主側の立ち退き要求には、自ら建物の使用が必要になったという事情や、明け渡しに対する補償など、「正当な事由」が必要です。ところが、入居者に説明できるものが何もない、ただ民間に売るために追い立てるというのは道理がなくむちゃな話です。

 定期契約者(〇三年十一月以降の契約者)に対しても、これまで拒否してきた説明会を開催することになり、退去困難な人については契約を伸ばすことになりました。

住民とともに

 ――これからの運動が大事ですね。

 その通りです。転居するかどうかはもちろん個人の自由ですが、たとえ一世帯でも路頭に放り出させてはなりません。私たちは、廃止決定を白紙に戻し、住民の居住権を尊重すること、収入が不安定な非正規雇用が増えている現在の経済情勢のもとで、むしろ役割を増している雇用促進住宅の積極的な活用をはかることなどを要求しています。

 自民・公明政権はこの間、公営住宅は建設せず、UR住宅も大幅削減し、住宅の確保を民間に任せる政策を続けてきました。それと軌を一にした雇用促進住宅の廃止は、国民生活破壊の冷たい政治の表れであり、総選挙の争点の一つでもあります。

 各地の住宅には自治会がないところも多いのですが、全国の居住権を守る運動を伝える「しんぶん赤旗」やビラ、情報資料などをもって訪問すると、「説明に来てほしい」「住民が集まる草刈り作業のときに話をしてほしい」などの要望があいつぎます。

 日本共産党は、全国の居住者のみなさんと連帯し、またUR住宅や公営住宅を守るたたかいとも連携して、運動を広げるためにがんばります。


 雇用促進住宅 当初はエネルギー転換・石炭鉱閉山などで移転・転職を余儀なくされた人々の住居確保を目的に一九六〇年から国が建設し始めました。その後、移転就職者のほか、「職業の安定を図るために宿舎の確保を図ることが必要」な勤労者も対象になり、資格要件が緩和されました。現在、全都道府県の約十四万戸に三十五万人を受け入れています。


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