2008年9月8日(月)「しんぶん赤旗」

対インド核輸出を解禁

米提案 供給国総会が承認


 原子力供給国グループ(NSG、日本など四十五カ国)は六日、ウィーンで開いた臨時総会で、インドに対する原子力(核)関連の輸出を解禁するという米国の提案を全会一致で承認しました。

 米国が民生用の原子力燃料や技術でインドに協力する米印原子力協定の発効条件の一つがクリアされたことになり、米議会が今後改めて承認すれば、米印協定はブッシュ大統領の任期中の発効となります。

 核不拡散条約(NPT)に加盟せず核兵器を保有するインドに対して原子力関連の協力を承認するのは、NPTの形骸(けいがい)化だという批判が高まるもとでの承認となりました。

 現地からの報道によると、NSG総会ではオーストラリアやスイスなどが承認に慎重でした。インドの核実験再開禁止を条件にすることの明文化などを要求しました。

 総会は全会一致を原則とするため、五日までだった総会の会期を延長。その間、米国が必死の説得活動を展開。ブッシュ大統領も慎重派の国々に電話工作をおこないました。インドのムカジー外相も核実験の自主的凍結の継続などを表明して理解を求めました。

 NSGはインドが一九七四年に最初に核実験を行ったのを機に発足。以来、インドへの原子力関連の移転を禁止しており、今回三十四年ぶりに解禁したことになります。


解説

すべての国の核廃絶こそ

 今回問われたのは、核不拡散条約(NPT)に加盟せず核兵器を開発した国(インドはその一つ)に対し、民生用の原子力(核)協力を行うことを認めるのは、NPTを掘り崩すという問題でした。しかし核不拡散を保障する最大のかぎは、すべての国の核兵器を禁止し廃絶することにあります。

 NPTは、米ロ英仏中の五カ国だけを核兵器国と認め、それ以外の国を非核兵器国として核兵器保有を禁じています。このためインドは、NPTを差別条約だとして加盟することを拒否しています。

 その一方でNPTは、この非核兵器国に対し原子力の平和利用の権利を認め、原子力開発を行う場合には核兵器の転用防止のため国際原子力機関(IAEA)による監督を受けることを義務づけています。

 核兵器国五カ国以外の国は、NPTに入ることで核兵器不保持を誓約し、その保障措置も受け入れて初めて原子力協力を受けられる仕組みです。

 ところが米国の提案は、核兵器を保有しながらNPTに未加盟のインドを特別扱いし、他国から民生用の協力を受けられるようにするというものです。

 ただ、NPTが上記五カ国だけに核兵器保有を認めていることも特別扱いです。NPTは五カ国以外に核兵器保有を禁じる代わりに、五カ国には核軍縮義務を課しています。しかし米国をはじめ五カ国は真剣な核軍縮努力をしてこず、むしろ使いやすい核兵器の開発によって、かえって核の拡散をあおってきたのが実情です。

 こうした事態を背景に、米国の国務長官や国防長官などを務めた有力者四氏が昨年、北朝鮮やイランの核問題への強い危惧(きぐ)から、その解決方向として核兵器のない世界の実現を主張。米民主党の最近の政策綱領も、大量破壊兵器の拡散問題の項で核兵器廃絶を目標に掲げました。

 インドのシン首相は六月、「核兵器のない世界へ向けて」と題した国際会議で、核兵器国としてインドを位置づけながら、すべての核兵器国による核兵器完全廃絶の目標への明確な約束の再確認、核兵器完全禁止条約の交渉開始などを提案しています。

 日本共産党の笠井亮衆院議員は四日、米印協定をめぐる集会で、核兵器のない世界への流れが広がっているとし、「核兵器拡散を防ぐ一番の保障は核兵器廃絶」と強調しています。(小玉純一)



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