2008年8月30日(土)「しんぶん赤旗」

主張

緊急総合対策

危機の根源にメス入れてこそ


 政府・与党が燃油や食料の高騰などに対応する「緊急総合対策」をまとめました。

 「総合対策」は高速道路料金の一部を一年間引き下げるとともに、省エネの促進、中小企業の「生産性向上」で成長力の強化を図るとしています。中小企業向けの対策の中心は政府系金融機関の融資枠の拡大です。

 生活関連では、低所得者や母子家庭への融資の拡充、住宅ローン減税の拡充などを掲げました。

「骨太方針」の「死守」

 「総合対策」は「改革」路線の継続と、社会保障の抑制路線を敷いた「骨太方針2006」の「死守」(二十五日の経済財政諮問会議、御手洗冨士夫キヤノン会長)を前提にした対策です。

 厚労省が二十九日、財務省に提出した〇九年度予算の概算要求は、社会保障の自然増の八千七百億円を約六千四百億円に、四分の一も削減する内容になっています。概算要求は、「骨太方針2006」に基づいて減らしてきた生活保護の母子加算を、〇九年度で完全に廃止するとしています。

 まじめに母子家庭への支援策を考えるなら非人間的な生活保護費の削減・廃止をやめるべきです。

 大きな批判が巻き起こっている後期高齢者医療制度で、政府は「総合対策」に一部保険料の軽減策を盛り込みました。後期高齢者医療制度は七十五歳という年齢でお年寄りを差別し、お年寄りの保険料負担を段階的に大きく増やす仕組みを組み込んだ制度です。一時的な取り繕いでは何の解決にもならないことは明らかです。この制度を廃止しない限り国民の不安はおさまりません。

 燃油・食料の高騰に対応するという看板にもかかわらず、急激な価格上昇の主因である投機マネーの暴走は野放しにしたままです。

 家計の消費が冷え切って売り上げが低迷している上に燃油や原材料費の値上がりで、農漁業者や運輸業など中小業者は存亡の危機に立たされています。その危機感を共有するなら、これまでの立場にとらわれずに国際的な投機規制の先頭に立つとともに、燃油代への直接補てんなど実効ある緊急対策に踏み出す必要があります。

 「総合対策」は「構造改革」の決まり文句である企業の「生産性向上」を掲げています。生産性の向上とは、より少ない労働力でより多くの物やサービスを生み出すことです。内需が抑制されて売り上げが伸びず、さらに労働者を守る規制がきわめて弱いところで生産性の向上を進めれば、しわ寄せは賃金と下請け単価の引き下げに及びます。

 大企業が正社員を派遣・請負に置き換えて生産性を上げた結果、若者の生活を悪化させ、内需の低迷にもつながっていることを直視すべきです。

「構造改革」の転換で

 「総合対策」は一年限りの措置として「定額減税」を年末の税制「抜本改革」の中で検討するとしています。財政のつじつまを、最後は消費税の大幅増税で合わせようという「財政健全化路線」が続くなら、一時的な減税を実施しても安心して消費には回せません。

 暮らしと経済の危機の根源にあるのは家計を犠牲にして大企業を応援する「構造改革」路線です。これを根本から転換し、暮らしに軸足を置いた経済・財政運営に切り替えることが必要です。


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