2008年8月28日(木)「しんぶん赤旗」

主張

アフガニスタン

戦争の泥沼が招いた悲劇


 アフガニスタンで活動する日本の非政府組織(NGO)「ペシャワール会」のボランティアワーカー、伊藤和也さんが現地の武装組織に拉致され、発見された遺体が伊藤さんと確認されました。

 伊藤さんは、農業の専門家として二〇〇三年いらい農業支援などの活動に当たっていました。武装組織の実態や殺害に至った詳しい経過は分かりませんが、戦時下のアフガニスタンで現地の人々のために献身的に活動していた日本人が不当に拉致され危害を加えられたことに、心から怒りを覚えます。

 アフガニスタンでは〇一年の「同時テロ」後、アメリカが同盟国とともにテロへの「報復」と称して開始した戦争によって、民間人を巻き込む泥沼の戦争状態が続いています。

 こうしたなかでペシャワール会など日本と世界のNGOは農業支援など地道な活動を続けてきましたが、情勢の悪化によってそれもままならなくなり、最近では人道支援のスタッフが戦闘に巻き込まれたり、攻撃される事件も相次いでいます。

 ペシャワール会代表の中村哲医師が六月、日本の陸上自衛隊派兵の動きが伝えられると、「身辺に危機を感じるようになった」と述べていたことは見過ごせません。

 戦争は罪のない人々を殺害し、憎悪をかき立てるだけで、テロをなくすことはできません。アフガニスタンに平和をもたらし、現地で献身的に活動するNGOのスタッフの安全を確保するためにも、軍事力による解決ではなく政治的・外交的解決が求められます。


農相事務所費

自浄能力の信じられない低さ

 内閣改造で入閣した太田誠一農林水産相が、政治団体の「主たる事務所」を秘書の自宅に置いたことにし、巨額の事務所費や人件費を支出したと届け出ていたことが明らかになりました。

 政治団体や資金管理団体の事務所費をめぐっては、一昨年来、佐田玄一郎行政改革担当相や松岡利勝農水相(故人)、赤城徳彦農水相(いずれも当時)らの疑惑が相次いで明らかになり追及されたばかりです。自浄能力の低さにきびしい批判は免れません。

 太田農水相の事務所費疑惑は、太田氏の政治団体「太田誠一代議士を育てる会」の事務所を秘書の自宅と届け出、事務所の費用や人件費として二〇〇五年に約千四十五万円、〇六年に約千三百万円を届け出ていたというものです。その後〇〇年から〇二年の三年間にも二千五百万円近くを計上していたことが明らかになりました(〇三、〇四年は落選中)。五年間の総額は五千万円近くに上ります。

 政治団体や資金管理団体の事務所を親族の自宅や国会の議員会館に置いたことにして、家賃や通信費などの事務所費や人件費、光熱水費などの名目で多額の費用を政治資金として届け出るやり方は、これまでの疑惑と同じ構図です。秘書宅には専用のスペースも専任の職員もおかず、実際に使われていたのか、他の用途への付け替えはないか、解明は不可欠です。

 政治資金収支報告書は、政治家や政党・政治団体が資金活動を透明にし、活動が「国民の不断の監視と批判の下に行われる」(政治資金規正法)ために定められています。その届け出を偽ったという疑惑は、政治家としての資格に欠けることを認めたも同然です。

 見過ごせないのは、太田氏が根拠となる領収書や会計帳簿を求められたのにも、「今週中に整理するよう事務所に指示している」とするだけで、あいまいな態度をとり続けていることです。疑惑を自ら解明するのが国会の「政治倫理綱領」でも定められた、国会議員の責任です。事実を明らかにするのは当然であり、それができないなら、太田氏は閣僚失格です。

 佐田氏や赤城氏は閣僚の辞任に追い詰められ、松岡氏は自ら命を絶つ痛ましい結果となりました。自民党自身が昨年の参院選挙できびしい批判にさらされて惨敗し、当時の安倍晋三首相は政権を失いました。疑惑にこたえないなら、太田氏はもちろん、福田康夫首相が率いる政権そのものの自浄能力が全くないことになります。

 太田氏を農水相に任命した福田首相は、ひとごとのように「太田氏に説明させる」というだけでなく、自ら調査し明らかにする責任があります。



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