2008年8月24日(日)「しんぶん赤旗」

主張

アフガニスタン

軍事手段で平和は生まれない


 米軍による侵攻開始から七年を目前にしたアフガニスタンで、米欧諸国の侵攻軍と武装勢力タリバンとの武力衝突が激しくなり、双方の兵士だけでなく民間人にも大きな犠牲を出し続けています。

 ブッシュ米政権がアフガンへの大規模な増派を計画するなど、戦争は悪化の様相を示しています。戦争はテロをなくすどころか、逆にアフガンの困難を激化させています。いまこそ平和的手段による問題の解決をめざすべきです。

「最悪の年」とも

 米軍や北大西洋条約機構(NATO)主導の国際治安支援部隊(ISAF)に対するタリバンの自爆テロや武力攻撃は今年に入って強まり、外国軍の犠牲は「最悪」といわれる事態です。

 最近も、仏軍部隊が米軍特殊部隊などと偵察行動中に攻撃を受け、仏軍兵士十人が死亡しました(十九日)。フランス国民の衝撃は大きく、サルコジ大統領が翌日、アフガンに飛んで仏軍部隊の士気を鼓舞したほどです。その翌日には、ブラウン英首相も予告なしにアフガンを訪問し、カルザイ大統領に「支援」拡大を約束しました。

 タリバンの攻勢に対して米軍は空からの爆撃を強め、それによる民間人の犠牲が増えています。二十二日にはアフガン内務省が、西部での米軍の爆撃によって民間人七十六人が死亡し、その多くが子どもだったと発表しました。米軍側はこの情報を否定したものの、そもそも民間人への犠牲を顧みない姿勢です。こうした無差別攻撃が外国軍への住民の憎悪をかきたてています。

 いまや七年を迎える戦争が米軍に見通しのないものとなるもとで、誰と何のためにたたかっているのかさえはっきりしない状況になっています。

 米国は軍事力による制圧をめざし、地上軍の増派を進めています。ニューヨーク・タイムズ紙(二十一日付社説)は、「米国とNATO、中央アジアの同盟諸国が迅速に動かないなら、この戦争は敗北する」とし、米軍増派を求めました。大統領選挙を二カ月余に控え、オバマ、マケイン両候補も増派を主張しています。マケイン氏がイラク戦争も重視するのに対して、オバマ氏はイラクからアフガンへ焦点を移すという程度の違いしかありません。

 しかしアフガンの現実が示しているのは、戦争はテロと暴力の土壌を広げるだけだということです。戦争でアフガンに平和を生み出すことはできず、軍事的対応を拡大すべきではありません。テロの温床となっている貧困などの問題に有効に対処できる平和的手段こそが問題を解決できます。

 「政治解決」を重視する論調は、仏紙リベラシオン(二十日付社説)や英紙ガーディアン(二十二日付)をはじめ、欧州や米国内でも広がっています。

特措法延長やめよ

 日本政府は、海上自衛隊によるインド洋上での給油活動を通じて、アフガンへの攻撃と民間人の犠牲に加担しています。福田康夫首相は次の臨時国会で給油活動の延長を図る構えです。

 自前の平和戦略をなんらも持たず、米国に追随して戦争に加担し続けるべきではありません。テロ特措法の延長は、アフガンの事態の解決のためにも許されることではありません。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp