2008年8月12日(火)「しんぶん赤旗」

主張

食料自給率40%

農政の根本的転換が急務だ


 農水省が発表した二〇〇七年度の食料自給率(カロリーベース)は40%と前年度から1ポイント上昇しました。十三年ぶりの対前年度比増ですが、好天で小麦や砂糖類の生産量が増えたりコメの一人当たり消費量が増えたためで、農政がもたらしたわけではありません。

 世界的な食料危機のなか、異常に低い自給率の引き上げは国民的な関心事です。いまこそ自給率を50%以上に引き上げることを国政の重要課題として位置づけ、それを実現するため農政を根本的に転換しなければなりません。

破たんずみの路線

 国民が消費する食料の大半を外国に頼る日本の異常さは際立っています。主要国の食料自給率は直近(〇三年)で米国128%、フランス122%、ドイツ84%、イギリス70%など、多くが食料を国内生産で基本的にまかなっています。日本も一九六〇年度には79%を記録していましたが、八〇年代後半には50%を割り込み、低落傾向をたどってきました。

 これは、農産物の生産に必要な農地の大半を外国に依存していることを意味します。一方で、農家経営が成り立たなくなったり、政府の減反強制で耕作が放棄された農地は埼玉県の総面積に匹敵する規模にのぼっています。

 歴代自民党政府は、国際競争力を旗印にした構造改革路線のもとで小規模経営を切り捨ててきました。それでも輸入自由化による「コスト削減」圧力のもと、いまでは大規模経営さえ生き残るのが困難です。

 自給率「1ポイント上昇」の報に、就任したばかりの太田誠一農水相は「大変心強い兆候だ。この状況が続くように頑張っていきたい」と、まるで福田政権の手柄であるかのように述べました。政府も自給率引き上げを掲げていますが、その政策は破たんが明らかな構造改革路線を引き継ぎ、加速さえしようとする逆行ぶりです。

 福田政権の政策策定の司令塔である経済財政諮問会議は、農地規制の見直しなどによる「企業型農業経営の拡大」を軸とした「農業改革プラン」を年内につくるとしています。

 企業は利益をあげることが第一で、利益が出なければ撤退しかねません。農業は全体としてみればさほど利益の出る産業ではありません。そのことは、経営規模がはるかに大きい米国や欧州連合(EU)でも家族経営が主力であり、政府が手厚い補助金で農業を支えていることでも一目瞭然(りょうぜん)です。

 「企業型経営」の推進は、部分的には成功しても、全体として農業を地盤沈下させるものであり、自給率の向上にはつながりません。財界寄りのこうした路線はきっぱり見直すべきです。

農家経営の安定を

 太田農水相は自給率引き上げの手だてとして、水田を活用したエサ米の増産をあげています。これには農家への所得補償が不可欠であり、その方針を示さないままでは現実性がありません。

 日本共産党の農業再生プランが強調するように、農政を抜本的に転換し、日本農業を担っている多様な家族経営を支援し、経営を安定できるようにしなければなりません。生産費をまかなえることが決定的であり、そのためにコメの不足払いをはじめ農産物の価格保障や所得補償を行うべきです。



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