2008年7月27日(日)「しんぶん赤旗」

主張

フィクサー逮捕

政軍財癒着の全体像に迫れ


 軍事利権をめぐり、日米の軍需産業と防衛省高級官僚、「防衛族」国会議員などの「パイプ」役といわれた「日米平和・文化交流協会」常勤理事の秋山直紀氏が、脱税の疑いで逮捕されました。

 秋山氏の逮捕が当初の予想とは大幅に遅れ、逮捕容疑も個人としての所得税法違反というのはいささか肩透かしですが、もともと秋山氏は、軍事利権の「フィクサー」(黒幕)とまでいわれた人物です。このさい秋山氏がかかわった政軍財癒着の全体像を、徹底的に糾明すべきです。

個人犯罪ではすまない

 軍事利権への関与が指摘されてきた久間章生元防衛相は、秋山氏の逮捕に際し、「個人の所得の中身まで分からない。その金がわれわれに入ったことはない」と人ごとのように発言しています。秋山氏に脱税の罪を押し付けるだけですまそうとしているのなら、それこそ重大です。

 軍事利権の「フィクサー」として一部では知られていた秋山氏が、一躍マスメディアに登場するきっかけになったのは、昨年発覚した守屋武昌前防衛事務次官が軍需商社「山田洋行」の宮崎元伸元専務らから過剰な接待を受けていた事件です。秋山氏が、守屋前次官らと久間元防衛相や額賀福志郎現財務相ら「防衛族」議員との結び付きを強めていただけでなく、「安全保障議員協議会」や「日米平和・文化交流協会」を舞台に日米の軍需産業や「防衛族」議員を組織し、防衛省への売り込みを後押ししていたことは、まさに「フィクサー」の名にふさわしいものでした。

 秋山氏が組織した「議員協議会」や「交流協会」には、久間氏や額賀氏ら自民・公明・民主の国会議員、コーエン元米国防長官ら米側の政府高官、三菱重工業や神戸製鋼所など日米の名だたる軍需産業が名前を連ねました。巨額の利権につながるミサイル防衛(MD)の導入を率先して働きかけたのもこのグループです。日米の政軍財癒着に果たした秋山氏の役割を見れば、ことは個人の脱税事件ですまされるべきではありません。

 だいたい、秋山氏の脱税が疑われているのも、防衛省に食い込んだ「山田洋行」や旧日本軍の毒ガス弾処理事業に関与した神戸製鋼などからのコンサルタント料です。それは何のためだったのか、それ以外の企業は金を出していないのか、徹底的に調査すべきです。

 金を出した側があればもらった側もあるはずです。秋山氏が組織した団体は、毎年一回、日米で「安全保障戦略会議」を開催し、参加した「防衛族」議員らの交通費や宿泊費らを負担していたことが明らかになっています。秋山氏の脱税が疑われた資金も、「防衛族」議員らへ提供された可能性があります。秋山氏に責任を押し付け、トカゲのしっぽ切りを図るような狙いを阻止するためにも、巨額の資金の流れの徹底追及は不可欠です。

政府・防衛省の責任

 政府の「防衛省改革会議」は守屋前次官らの「不祥事」についての報告を先日まとめましたが、個人の「責任意識の希薄化」を問題にするだけで、政軍財癒着にメスを入れようとしていません。「不祥事」をほんとうに反省するというなら、徹底解明は政府・防衛省の責任です。とりわけ福田康夫首相は与党と内閣の責任者として、率先して責任を果たすべきです。


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