2008年7月25日(金)「しんぶん赤旗」

主張

燃油急騰対策

直接補てんは待ったなしだ


 原油価格の急騰による燃油の高騰で、漁業者、農業者、中小の運送業者などの経営悪化が広がっています。とりわけ打撃が大きい漁業者は、いっせい休漁などで窮状を訴え、燃油価格への国の直接補てん(補助)を求めています。

 日本共産党はこの間、大日本水産会、全国漁業協同組合連合会などと懇談を重ねてきました。漁業者が求める燃油価格への直接補てんは、待ったなしです。

漁業者の死活問題に

 漁船の燃料や集魚灯などの発電用として使われるA重油の価格は、二〇〇三年の平均三万九千円(一キロリットルあたり)がこの七月には十一万五千四百円にと、この五年間で三倍にも達しています。漁業者にとってとりわけ深刻なのは、漁船を使った漁業では操業コストに占める燃油代の比重が高く、現在の燃油価格では、コストの30%から40%にも達していることです。値上がり前は10%から20%でした。

 燃油価格の高騰は漁業者の経営を直撃しています。漁業者は漁船を減速したり、集魚灯の光量を落としたりしてコスト削減に努めていますが、燃油価格の高騰には追いつきません。出漁すれば赤字が出るからと、休漁する漁業者が相次いでいるのが実情です。

 漁業者にとって、燃油価格が急騰しても、それを水産物の価格には転嫁しにくい仕組みになっていることも深刻な問題です。

 水産物は産地の市場―中卸業者―消費地の市場―小売業者と複雑な流通をたどり、市場ではせりで価格が決まるので、生産者の実態が反映させられにくくなっています。しかも大手スーパーなどによる買いたたきなど、コストを無視した価格が横行しています。

 水産庁がアジやイワシなど生鮮水産物十品目について〇五年に調査したところでも、生産者の手元に残るのは小売価格の24%ほどでしかありません。このなかには生産者が負担する市場の手数料や資材費が含まれ、生産者の手取りはわずかです。燃油価格の高騰はそれさえ奪っています。

 自らの責任ではない燃油価格の急騰にたいし、国に直接補てんを求める漁業者の要求は正当なものです。政府がこれまで取ってきた省エネ設備への補助や流通効率化の対策ではもはや限界です。国が直接補てんして燃油価格を引き下げなければ、漁業者は最低限のコストさえまかなえないのです。

 関係者は、現在の十一万円台の燃料価格が十三万円台になれば、三割の漁業者が廃業するといいます。文字通り死活問題です。国際的な投機を規制し、原油価格を引き下げることは当然やらなければなりませんが、漁業者の現状は、その効果を待っておれないほど追い詰められています。

国民の食卓守るため

 燃油価格の高騰で漁業者が廃業に追い込まれれば、向上が求められている食料自給率がさらに低下してしまいます。

 漁業者の直接補てんの要求にたいし政府は、「ストレートにまとめて面倒見ることはない」(町村信孝官房長官)と否定的です。漁業者の個人補償になるからというのがその理由ですが、ことは日本経済と国民生活全体にかかわります。

 政府が態度を改め、直接補てんを求める漁業者の声に応えることが、国民の利益になります。



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