2008年7月23日(水)「しんぶん赤旗」

主張

軍事費増額要求

戦費の付け回しは許されない


 アメリカ政府の日本への露骨な軍事費増額要求が続いています。

 シーファー駐日米国大使は、日本外国特派員協会での講演(五月二十日)で、「将来の安全保障上のニーズ」のために「増額させることの利益を検討すべき」だとのべました。アルビズ米国務副次官補は米議会で、日本の軍事費全体を「包括的に見直す」ための対日交渉を始めるとのべました(六月十二日)。イラク戦争などで膨れ上がった戦費の負担を減らし、日本の軍事負担を拡大するためです。

むきだしの圧力

 アメリカの国防費は、一九九八年に二千五百二十億ドルだったものが二〇〇七年は四千八百十億ドルと二倍です。アフガニスタンとイラクでの戦費千四百二十億ドルを加えるとさらに膨れ上がります。

 アメリカの国防費激増は、世界に対するアメリカの影響力を誇示するために核兵器を中核とする軍事力を増強し、違法な戦争政策を進めている結果です。アメリカの負担が重くなっているのはブッシュ政権の責任です。日本に軍事費増額をせまるなど筋違いです。

 シーファー大使らは、日本の軍事費がGDP(国内総生産)1%未満の0・89%に下がっているのが「問題」だといい、NATO(北大西洋条約機構)のどの国よりも低いと難癖をつけています。

 これは日本に対するあからさまな内政干渉です。GDP比で軍事費がわずかばかり下がっているとはいえ、日本の軍事費は世界で第五位の軍事大国です。

 GDP比で少し下がったのは、軍事費をごくわずか削ることで、政府が社会保障や教育など国民生活予算を大幅に切り縮めるバネにしたからです。軍事費の聖域化に対する国民の反発を無視できなかったことも背景になっています。こうした事情を無視して、GDP比が下がっていると難癖をつけ、増額をせまるなど言語道断です。

 アルビズ国務副次官補は、二千億円を超える米軍「思いやり予算」が九十億円ほど減らされたことを問題にし、「思いやり予算」を含めた包括的な見直し交渉をするといっています。「思いやり予算」は米軍地位協定で米軍がすべて負担することになっている予算です。全額廃止されて当然の予算です。文句をいうなど本末転倒です。

 アメリカは、先制攻撃戦略への日本動員の強化と戦費分担の拡大を狙っています。イラク空輸支援やアフガニスタン報復戦争での給油支援ばかりではなく、インド洋をまたぐシーレーン(海上交通路)防衛に日本を参加させる狙いもあります。アメリカから武器・装備をもっと買えという圧力も含んでいます。アメリカの要求は日本の主権を無視した横暴勝手であって、許すわけにはいきません。

大幅削減めざせ

 福田康夫首相は、洞爺湖サミット直前の日米首脳会談で、日米同盟の「飛躍的に深化」と「いっそうの強化」を強調しました。しかし、日本は憲法で戦争を否定し、戦力の保持を認めていません。来年一月に期限切れになるインド洋での給油支援継続のための給油新法の改定はもちろん、七月に期限切れになるイラクでの空輸支援の継続も憲法違反です。

 日米軍事同盟を背景にした軍事費増額要求をきっぱり拒否し、軍事費の聖域化を許さず、大胆にメスを入れることが重要です。


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