2008年7月21日(月)「しんぶん赤旗」

主張

農業「規制緩和」

担い手つぶす「亡国の農政」


 市場競争に委ねて「ビジネスチャンス」を拡大すれば、日本の農林水産業は「魅力のある産業」に生まれ変わる―。

 アメリカでさえ基幹作物は政府が手厚く保護しているというのに、日本の農業、米作りをいっそう市場に任せるよう政府の「規制改革会議」が求めています。

中小農家を切り捨てて

 規制改革会議が今月発表した「中間とりまとめ」は、農林水産業は「手厚い保護政策が維持されたため」に、「構造改革が大幅に遅れている」とのべています。

 農業「構造改革」とは農業と農地を株式会社に開放して一気に大規模化しようという主張であり、日本農業の担い手である中小の家族経営を切り捨てる議論です。

 実際に「中間とりまとめ」は、「生産性の低い農地」で大幅減産し「生産性の高い農地」の減産を不要にするとして「生産割当量の取引市場」創設を求めています。減反をすべて小規模経営の農家に押し付け、米作りからの退出を促す制度にほかなりません。

 さらに、「経営主体を問わず」効率利用をするものに農地を委ねるべきだと、農地保有の株式会社にたいする規制の早期撤廃を求めています。しかし、利潤追求を第一義とする株式会社が耕作放棄地を引き受ける保証も、営農を続ける保証もないことは明らかです。

 自民党政府は一貫して国内生産を軽視して輸入依存をすすめ、画一的な規模拡大を押し付けてきました。「手厚い保護」どころか、どの国も農業政策の要として力を入れている価格保障や経営安定の対策を放棄してきたのが実態です。その結果、かけがえのない担い手である中小農家は切り捨てられ、規模を拡大した農家も米価の暴落で経営を続けられない事態が広がっています。食料自給率を世界でも異常に低い39%にまで低下させてしまった責任は、自民党の「亡国の農政」にあります。

 規制改革会議の主張は、利潤第一の株式会社の参入など市場原理を徹底することで「亡国の農政」を完遂させようという暴論です。

 食料と農業をめぐる内外情勢は激変しています。「中間とりまとめ」は、世界の食料危機という「潮目の変化を踏まえ」て「規制改革を進めていくことが重要」だとしています。危機に付け込んで「構造改革」を推進する小泉内閣以来のやり方は、もはや通用しません。食料危機に際して、日本の食料生産を土台から崩壊させる規制改革会議の主張は「百害あって一利なし」です。

 「中間とりまとめ」は食料危機の原因を分析しています。しかし、米ブッシュ政権以外の誰もが価格暴騰の大きな原因だと指摘する投機マネーの暴走については、一言も触れていません。同じ「中間とりまとめ」で、金融分野の自由化・規制緩和の徹底を提言している規制改革会議にとって、極めて「不都合」な事実だからです。

何が何でも「規制緩和」

 経済・社会の実態をありのままに分析することなしに、現実の矛盾を解決する政策を導き出せるはずがありません。

 「構造改革」の深刻な被害が次々と表面化しているのに、規制改革会議は何が何でも「構造改革」「規制緩和」一辺倒です。「構造改革」の推進を目的に設立された同会議の議論は、くらしと経済の被害をさらに拡大する机上の空論です。


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