2008年7月9日(水)「しんぶん赤旗」

主張

景気後退

「構造改革」路線続ける限り


 景気の動きに敏感な仕事をしている約二千人を対象にした「景気ウォッチャー調査」が、景気の急速な悪化を示しています。

 内閣府が八日発表した六月の調査結果によると、景気の現状判断の指数が三カ月連続で悪化し、過去三番目に低い水準に落ち込みました。内閣府は「景気の実感はさらに一段と弱くなっている」としています。

 七日の日銀の地域経済報告も、所得や個人消費の冷え込みから、全国九地域のうち八地域で景気判断を悪化の方向に修正しました。

庶民の犠牲の上に

 小泉内閣以来、政府は景気回復が長期にわたって続いていると経済運営を自画自賛してきました。しかしその実態は、輸出関連の大企業が過去最高益に沸く一方で、所得が低迷する家計には実感がまったくない“国民置き去り”の「回復」にすぎませんでした。

 昨年来、大企業の生産の動きに強い影響を受ける景気動向指数の下落傾向が鮮明になり、日銀短観の大企業の業況判断も連続で悪化しています。

 回復を実感できないまま、家計は再び景気悪化の波にのみ込まれようとしています。

 「構造改革」路線は「国際競争力の強化」を名目に、トヨタやキヤノンなど大企業の「コスト」削減を、企業減税や労働者派遣の規制緩和で応援してきました。

 単なる大企業応援ではありません。年金課税の強化や定率減税の廃止による負担増、若者を非正規雇用に押し込めて貧困を拡大するなど、庶民の犠牲を前提にした応援です。自公政府が実行してきたことは、庶民のふところから吸い上げて大企業に回す逆向きの所得再分配にほかなりません。

 家計を冷やす経済運営を進めながら、自公政府は「企業部門の好調さが持続し、これが家計部門へ波及」(月例経済報告)すると国民に説明してきました。この「シナリオ」さえ、政府は昨年十二月の月例報告以後削除したままです。

 輸出関連の大企業が頼みにする米国経済が金融問題や原油の高騰で急速にしぼみ始めているのに、家計が冷え込んでいるため国内需要に頼ることができない―。相次ぐ景気悪化の指標や株価低迷は、自公政府の経済運営が完全に破たんしていることを示しています。

 「景気ウォッチャー調査」に次のような声が出ています。「『給料は上がらなくても物価は下がるもの』という感覚が通用しなくなっている」(中国地方の家電量販店の予算担当者)―。これまで、わずかでも負担を減らしてきた物価の下落が反転し、家計の出費を増やす方向に変化したことが消費者の心理を急速に冷やしています。

家計応援に軸足を

 物価上昇を目標に異例の超低金利を続ける日銀の金融政策は、米国などの投機ファンドの資金調達を容易にし、石油や食料の高騰に加担する結果となっています。それがいま、外来の物価上昇として国民生活を苦しめているのであり、「構造改革」は金融政策の面でも破たんに直面しています。

 「構造改革」路線のゆきづまりは深刻です。大企業中心から家計の応援に軸足を置いた経済・金融政策に切り替え、輸出頼みの姿勢を改めて内需を活性化する経済運営へと抜本転換することが求められています。


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