2008年7月7日(月)「しんぶん赤旗」

ゆうPRESS

二胡は僕の杖

中2 「衝撃的出合い」

病気・いじめ 自殺考え/養護学校を脱走/プロに師事「あきらめない」

長野市 田村 望圓(ぼうえん)さん(27)


 田村望圓(ぼうえん)さん(27)=長野市在住=が奏でる二胡の音色は哀愁を帯び聴衆を魅了します。「二胡は僕の杖(つえ)」という望圓さん。陰湿ないじめをうけて引きこもりになった小・中学生のころ。閉塞(へいそく)感を切り開いた二胡への思いを聞きました。(菅野尚夫)


 言葉のいじめは幼稚園のころからありました。原因は、腰や足首の筋肉がこわばる病気(形成まひ)になって歩行障害があったからでした。

 「彫刻刀をのど元に突きつけて自殺しようとしたこともある」という望圓さん。自殺を思いとどまった理由を二つあげます。一つは、いじめている人が生き残って、先に自分が死ぬのは理不尽だと怒りを感じたこと。もう一つは家族が悲しみ、離れ離れになってしまうことでした。

足がすくんで

 神奈川県座間市に生まれた望圓さんは、小学3年生のとき、両親と姉の家族4人で長野市に移住しました。父・純道さんが実家の清林寺(浄土宗)を継ぐことになったからです。

 転校先で、いじめは激しくなりました。「荒れたクラスで、一番弱かった僕がいじめっ子の標的になった」といいます。

 「歩き方がおかしいぞ」「何をやっても駄目なやつ」―。容赦無い言葉の暴力にあい、「校門の前に来ると足がすくみ校内に入れなくなりました」。

 中学生になってもいじめは続き、形成まひは悪化、車いすでないと歩けなくなりました。東長野病院内にあった若槻養護学校に移り、治療しながら学びました。そこでもいじめをうけ、病院を「脱走」しました。

 「やればできるじゃないか」。小児科の主任先生からかけられた言葉です。「怒られる」と思っていたら、励ましの言葉でした。

 このころから、望圓さんは「だんだん明るくなった」といいます。

BGMの音色

 「心を揺さぶられる衝撃だった」。望圓さんは、初めて二胡に接した時の感動をそう表現します。

 中学2年生のときでした。テレビゲームのバックグラウンドミュージック(BGM)として流れてきた音色。「ずうずうしく心のひだまで染み入ってくる。この楽器はなんだろう」。「魂をわしづかみされた」思いに駆られ、その楽器を探し求めました。

 ほどなく、自分をとりこにした楽器が二胡と分かり、買い求めました。音楽の素養がなかった望圓さんは、譜面も読めず、「豚殺しの音(初心者の二胡奏者が出す音)しか出せませんでした」。

 自己流の練習に限界を感じていたころ、転機が訪れました。1998年、二胡のプロ奏者として活躍していた楊興新(ヤン・シンシン)さんのコンサートが長野市で開かれたのです。生の演奏の素晴らしさと、レベルの高さに圧倒されました。「感動で体が動けなくなるほど興奮した」といいます。

 望圓さんは「師事をうけよう」と心に刻みました。

決意まで数年

 楊さんが開いている二胡教室は東京でした。長いこと引きこもり、足の不自由な望圓さんにとって一大決心です。決意まで数年かかりましたが、「だれにもない秀でたものを身に付けたい」一念で実行しました。

 毎月1回、朝6時すぎ、長野から東京に向かいました。

 教室では、先生が「鬼のように怖い」存在でしたが、絶対にあきらめない確信はありました。「自分にとって自信のもてる唯一のものは二胡しかない」からです。

 9年間、教室には欠かさず通いました。「厳しいレッスンに泣いて帰ることもありました」が、直接楊さんから指導が受けられるまでに上達しました。

 お寺の仕事を手伝いながら、父親の法話とあわせて、二胡を演奏したところ評判になりました。今では、地域の文化祭、幼稚園、敬老会などにボランティアで出かけ、演奏しています。口コミで広がり、長野県内だけでなく全国各地から演奏の依頼がきています。

 「涙を流して聞いてくれる聴衆から、生きる力をもらっている」という望圓さん。母親の紀子さんは、「杖というより、金棒を得たようにたくましくなった」と、息子の姿に目をほそめます。

 2006年、自分の練習を温かく見守ってくれた祖母の死を悼み、「終わりのない道」を作曲しました。今年春にはCDを発売しました。

 「高校卒業の資格をとって、佛教大学に進学する予定です。心にゆとりがないと自分のやりたい道も見つかりません。『好きなことをやって良いんだよ』と見守ってくれた両親に感謝しています」。望圓さんの新たな挑戦が始まっています。


お悩みHunter

お金持ちの彼 「格差」に悩み

  付き合っている彼氏がお金持ちです。ランチをするにも、私にはとても払えない金額の高級店に行ったり、高いワインを頼んだりします。ちなみに割り勘です。彼のことは好きですが、デートの度に「格差」を感じてしまい、楽しめません。(21歳 女性 愛知県)

いまの気持ち早めに伝えて

  「彼氏が貧乏で困ってます!」というのではなくてその逆なんですね。せっかくのデートも高いお店に入ってしまったらおサイフが気になって仕方がありませんね。プレゼントにしても高価なものをいただいてしまうと逆に困ってしまうかもしれません。

 おそらく彼にしてみれば、あなたに喜んでもらいたくていいお店を探してお誘いしているのだと思います。それなのにあなたが楽しんでくれなかったら彼もちょっとかわいそうです。

 お金持ちでもサイフのヒモがかたい人もいますし、彼ももしかしたら無理していいお店に入っているかもしれません。やはり一度いまの気持ちを彼に伝えてみたほうがいいと思います。

 人は生まれ育った環境がみんな違うわけですから、経済的な面だけでなく生活全般、あるいは性格や考え方の違いなどあらゆるところで自分との違いがあって当然だと思います。そうした違いは付き合っていくなかでお互いに認め合ったり、歩み寄っていくのだと思います。

 でも金銭感覚の違いは早めに理解し合わないと付き合っていくうえで大変苦労してしまうと思います。ここはあなたの方から積極的に、行ってみたいお店や、あなたが望むデートについて話してあげられるといいですね。なんならあなたが彼にお料理を作ってあげてはどうでしょうか。

 あなたが楽しむことが彼にとっても一番楽しいと感じるひとときだと思います。これからもお互いを大切にしてすてきな恋愛を楽しんでください。


第41代日本ウエルター級チャンピオン 小林 秀一さん

 東京工業大学卒。家業の豆腐屋を継ぎながらボクシングでプロデビュー。99年新人王。03年第41代日本ウエルター級チャンピオン。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp