2008年7月3日(木)「しんぶん赤旗」

主張

教育振興基本計画

介入・支配は許されない


 政府初の「教育振興基本計画」が決定されました。おととし改悪された教育基本法にもとづくもので、今後五カ年の教育施策を定めています。

 問題はこの「計画」にどんな意味がこめられているのかです。

国策に沿う人づくり

 「計画」はなにより教育を国策に従属させる意図があらわです。

 「計画」の中心は、子どもや学校間の競争をあおる「全国学力テスト」や、詰め込みすぎなどが懸念されている新学習指導要領の徹底などの「学力」対策と、政府に都合のいい「愛国心」教育など子どもの心を上から鋳型にはめるような旧来型の「道徳」の押しつけです。これは、政府・財界が進める「弱肉強食の経済社会」「海外で戦争をする国」という二つの国策に従う人間づくりにほかなりません。

 「全国学力テスト」や旧来型の「道徳」教育などには、日々子どもと接している多くの教育関係者は懐疑的です。その抵抗をおさえるために、一省庁の施策を基本法にもとづく政府の計画に格上げしたわけです。

 しかも「計画」は、教育現場を従わせるため、「PDCAサイクル」を用いることを明記しました。

 もともと「PDCAサイクル」は、プラン(計画)、ドゥー(実行)、チェック(点検)、アクト(改善)の四段階で計画をスムーズに進める管理方法で、工場生産などに使われていたものです。それを教育に適用するねらいは何でしょうか。

 計画は国がつくり、現場に実行させる。それを国が数値などで点検し、それにもとづいて現場に改善を命じる。国による露骨な教育統制であることは明らかです。

 教育内容には「これが絶対」というものはなく、子どもと教師のふれあいなどのなかで、専門的に、自主的に選びとられることが大切です。だから自主性が不可欠だというのが、憲法の立場です。その教育の自主性を侵す「計画」の撤回を強く求めます。

 基本法は、地方自治体に、国の計画を参考に自らの「基本的な計画」をつくる努力義務を課しています。しかし法律上、国のいいなりになる必要はありません。地方の教育の実態をよくふまえ、教育条件整備を中心にすえた、教育内容への不当な介入とならない施策が期待されます。

 「計画」は、教育条件を切り下げる意図もあらわにしています。

 もともと日本の教育予算水準は、OECD(経済協力開発機構)のなかで最低クラスにあり、その改善は立場をこえた国民的課題です。欧米では考えられない「四十人学級」「高学費」など低予算の弊害は枚挙にいとまがありません。

教育予算削減計画

 この問題は政府内でも論争となりました。文科省は教育予算・教職員の増を主張しました。ところが財務省は、「日本の教育予算は遜色ない」などと百三十三ページもの反論書をつくり、結局、閣議は予算増につながる記述をことごとく削除しました。今後、「教職員一万人削減」「学校統廃合」などがすすめられます。

 教育を国家に従属させる一方、世界最低水準の教育予算をさらに削る―。このような自民党政治に教育は任せられません。国民の願いにこたえ、新しい教育をつくるために力をあわせましょう。



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