2008年6月18日(水)「しんぶん赤旗」

医師の削減 政府見直し

増員向け調整へ


 深刻な医師不足問題で、舛添要一厚生労働相は十七日、閣議後の記者会見で、医師を削減するとした一九九七年の閣議決定を見直すことを表明しました。

 舛添厚労相は、「医師の数は増やすべきだ。十年以上たって医療崩壊という状況になっている。見直す方向で調整すべきで、首相の了解も得た」と述べ、医師過剰との見解を事実上撤回することを表明しました。

 また、近く決定する「骨太方針」に盛り込めないか調整するとしています。ただ、財源については「細かい詰めはしていない」と述べました。

 医師数をめぐっては、八二年に初めて、削減する閣議決定が行われ、九七年にも「引き続き医師削減に取り組む」とされ、政府は一貫して医師過剰との見解を示してきました。二○○六年八月に東北地方を中心に十県の医学部の定員を増やすことを決め、今年度から増員しましたが、あくまで「暫定的措置」との見解でした。

 日本共産党は、医師数増と医師を削減するとした閣議決定の見直しを強く要求してきました。


解説

現場の訴え、政府動かす

医師増員 医療費抑制は破綻

 「医師は不足ではなく偏在」との立場を崩そうとしなかった政府が、ようやく医師不足を認め、医師数を増やす方針に転換する考えを表明しました。救急車が患者の搬送先を見つけられない、医師が過酷な勤務を強いられるといった現場の深刻な実態が、政府を動かしたものです。政府の医療費抑制路線の破綻(はたん)でもあります。

 各地で「医療崩壊」を引き起こした医師不足の“元凶”は、「このままでは医師が過剰になる」として、医学部の定員削減などを決めた閣議決定(一九八二年、九七年)です。この結果、医師不足による過重労働が現場の医師を疲弊させ、さらなる医師の「立ち去り」を招く―という悪循環を起こしています。

 こうした問題を解決するために、医療現場からは、抜本的に医師数を増やすことを求める声が続出しました。日本共産党は、二〇〇七年に「医師不足を打開する提言」を発表。今年一月の参院本会議の代表質問では、市田忠義書記局長が「閣議決定を見直し、抜本的な医師増員に踏み出すべきだ」と、福田康夫首相に迫りました。

 もともと日本の医師数は人口千人あたり二・〇人で、経済協力開発機構(OECD)加盟三十カ国中二十七位という低レベル。OECD平均と比べると、十四万人も不足しているのが実態です。

 舛添要一厚労相は「財源の問題もある」と述べ、具体的な増員目標は明言しませんでした。「閣議決定」の見直しを表明した以上、医療費抑制路線を抜本的に改め、安心できる医療体制の確立に見合った規模に医師数を増やすかどうかが問われます。(秋野幸子)



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