2008年6月12日(木)「しんぶん赤旗」

日本共産党国会議員団総会での

志位委員長のあいさつ


 日本共産党の志位和夫委員長は十一日、参院本会議での福田康夫首相問責決議案採決に先立つ国会議員団総会であいさつしました。あいさつはつぎのとおりです。


写真

(写真)あいさつする志位和夫委員長=11日、国会内

 本日、民主党などが、福田首相への問責決議案を提出しました。この問題について、わが党の立場を、述べておきたいと思います。

いまの時点での問責決議案の提出は、適切ではない

 福田内閣が、内政・外交のあらゆる面で、問責に値する内閣であることは、いうまでもありません。発足いらい何をやってきたかを振り返ってみても、憲法違反の海外派兵への固執、後期高齢者医療制度の実施の強行、高速道路を際限なくつくり続ける道路計画に固執してきたことなど、この内閣が、二重、三重に問責に値する内閣であるということは明瞭(めいりょう)であります。(「そうだ」の声、拍手)

 しかし、そのことと、いつ、どういう状況のもとで問責決議案を提出するかということは、別の問題であります。昨日の書記局長の記者会見でも、本日の四野党書記局長・幹事長会談でも、わが党はいまの時点での問責決議案の提出は、適切ではないと表明してきました。

その重みにふさわしい効果が得られるか――機は熟しているとはいえない

 第一に、問責決議案というのは、たいへんに重いものであって、それを行使するには、その重みにふさわしい効果が得られる時期を選ぶべきであるにもかかわらず、現状ではその機は熟しているとはいえないということです。

 すなわち問責決議案というのは、それが可決されたら、政府を、解散・総選挙か、内閣総辞職のどちらかが回避できない状況に追い込んだときに、出すべきものであります。客観的にみて、そういう状況が果たしてあるだろうか。そういう状況がつくられていないことは、誰がみても明らかであります。

 さきほど四野党書記局長・幹事長会談が行われて、市田書記局長が、「いったいいま問責決議を可決させたら、解散に追い込めるという見通しがあるのか」ということを、民主党にただしたところ、鳩山幹事長は、「(福田首相は)解散に打って出ることはないだろう」と答えたそうです。問責決議案を提出する当人が、いま問責を出しても解散に追い込む状況にはないといっている。そのことをわかっていながら出すという。

 重要なことは、問責決議案というのは、何度も同じ内閣にたいして出せるようなものではないということです。その重みにふさわしい効果が得られる状況がないもとで、この手段を行使すれば、野党は重要なたたかいの手段を失うことになります。

論戦で自公政権を追い詰める姿勢も努力もないまま、党略的な都合での問責提出      

 しかも第二に、これを主導した民主党は、国会の論戦によって自公政権を追い詰めていくという真剣な姿勢で努力をしてきただろうかという問題です。率直にいって、その真剣な姿勢も努力も欠いたまま、はっきりいえばもっぱら民主党の党略的な都合で、問責決議案を提出するにいたった。これが二つ目の大きな問題です。

 野党が共同で提出した後期高齢者医療制度の廃止法案にたいする対応を考えてみましても、四野党の書記局長・幹事長会談で、この法案は国民の前で徹底審議を行う、参考人招致、地方公聴会もふくめて、徹底審議を行ったうえで、成立させるための努力をはかるという合意があったにもかかわらず、民主党は、参議院での“数の力”で、委員長の職権という形で乱暴な採決を強行し、みずから出した法案に自分で傷をつけるような行為を参議院で行いました。

 この法案はいま衆議院にまわってきました。いよいよ衆議院でこれから審議という段階なのです。しかも今日は、重要な党首討論が予定されていた。この党首討論ではもちろんわが党も発言を要求しています。党首討論もふくめて、これから衆院での審議だという段階で、問責決議案を出すということは、国民の前での徹底審議を投げ捨てるという態度だといわなければなりません。(拍手)

 今日の四野党の会談で、市田書記局長が、「なぜ党首討論をやめにするのか」とただしたそうです。それにたいして、民主党の幹事長は、「党首討論で議論した後では問責が出しにくくなる」と(笑い)。いったい、議論したらどうして問責が出しづらくなるのか。どういう議論をやろうとしているのか。そのことが根本から問われるような、理由にもならないいい訳をしたそうですが、党首討論をやめるなどというのは、およそ説明がつくものではありません。

 くわえて、この国会はよく自公と民主の間で「緊張感がない」といわれますが、いったい誰がこれだけ「緊張感がない」状況をつくったのか。たとえば、宇宙基本法案というのが出されました。憲法に反して宇宙の軍事利用に本格的に道を開く法案です。この悪法を自公民は水面下の談合で合意したら、国会でのまともな審議なしに一気に強行しました。

 それから、国家公務員基本法案というのが出されました。これは国民の願っている政官の癒着を断つこととは逆行する、逆に癒着を強めるような内容のものですが、これも自公民で水面下の談合で合意したら、一気に強行されました。

 それから、一方で「対決」、「対決」といいながら、国政の一番の根本の問題である憲法問題で、「新憲法制定議員同盟」を自公民が一体になって立ち上げて、憲法審査会の始動を狙うという動きも出てきました。

 こういう一連の動きが、自公政権にとってどれだけの助け舟になったかは、はかりしれないものがあるということも、いわなければなりません。

 さらに民主党は、問責決議案の提出の理由として、「協調型から対決型に転じるためだ」ということを述べたそうです。自分がつくったなれ合い状態を取り繕う。もっぱら民主党内の引き締めのために問責を出す。こういう党略的な目的で問責決議案を提出するという態度は、国民の支持を得られるものではありません。

 わが党は、さきほどの四野党会談でもこれらの問題点を主張しましたが、民主党はわが党の指摘にまともに答えられないまま、問責決議案の提出に固執するという態度をとりました。わが党は、提出された問責決議案には賛成しますが、共同提案には加わらないという立場でのぞむものであります。(「よし」の声、拍手)

一連の地方紙が的を射た指摘――わが党の立場こそ責任ある政党の立場

 この問題については、いくつかの地方紙が、的を射た指摘をしていますので紹介しておきたいと思います。

 神戸新聞は、「大詰め国会 胸に響いてこない『問責』」と題する社説で、つぎのようにのべています。「この問責決議案の意味はどこにあるのか。解散に備え『党内の引き締めを図る』という声が、民主党幹部から聞こえてくる。このあたりが小沢代表の真意かもしれないが、党内事情からの決議案提出では国民の理解を得られないという慎重な見方が、共産党から出ている。決議案が出されれば賛成すると断ったうえでの指摘とはいえ、同じような印象を持つ人はいるだろう」

 京都新聞は、「『問責』より党首討論を」と題する社説で、こうのべています。「福田政権との対決姿勢を強めるというのなら、問責決議ではなく、党首討論で、国会の場で堂々と渡り合ってもらいたい。小沢代表が不得手な討論を避けたとの声もあがっている。高齢者医療について、どちらの考え方や施策に説得力があるのか、国民の判断を仰ぐべきだ。それでこそ、民主党が目指す責任政党といえよう」

 信濃毎日新聞は、「首相問責決議 足元を見透かされては」と題する社説で、こう主張しています。「11日に予定されている党首討論を取りやめるよう、民主党は自民党に申し入れている。意味合いのはっきりしない決議案にこだわる一方、党首の直接対決を中止するのはいかにも分かりにくい。小沢代表は党首討論を避けたがっている、とみられるようでは、首相の座は引き寄せられない」

 一致して今回の問責決議案提出の問題点について本質を見抜く社説を書いているわけです。わが党の立場こそ、本当に責任ある政党の立場であることを、私はみなさんに確信をもって報告しておきたいと思うものであります。(拍手)

国会論戦と国民運動によって自公政権を追い詰める

 これから行われる参議院本会議で、問責決議案が可決された場合、わが党は、その結果を、政府が重く受け止めることを求めます。同時に、わが党は、国会論戦と国民運動によって自公政権を追い詰めるという大道にたって、ひきつづき奮闘していく決意であります。すなわち審議拒否という態度は取らない。審議のボイコットという態度は取りません。国民の前で徹底的な審議を行い、国会論戦によって自公政権を追い詰めていくために全力をつくすものであります。

 わけても、後期高齢者医療制度の廃止法案については、徹底審議のうえで、可決・成立させるためにあらゆる努力をはかり、この希代の高齢者差別法を撤廃に追い込むために最大の力をかたむけたい。国会論戦と国民運動で自公政権を追い詰めていくという大道にたって、頑張りぬくということを重ねて述べて、あいさつといたします。(拍手)


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