2008年6月10日(火)「しんぶん赤旗」

秋葉原殺傷事件

繁華街 数分の惨劇

罪なき人 犠牲


 世界的にも有名な電気街が惨劇の場となりました。東京都千代田区の秋葉原で八日に起きた連続殺傷事件。日曜日の歩行者天国に突っこんだ車が次つぎと人をなぎ倒し、車から降りた加藤智大容疑者(25)は通行人をナイフで刺しました。わずか数分間の出来事でした。奪われたのは七人の命でした。逮捕された加藤容疑者は、「人を殺すために来た」「誰でもよかった」などと供述しているといいます。この日は、二〇〇一年に大阪府池田市の小学校で、児童八人が殺害された無差別殺傷事件から七年。また何の罪もない市民が通り魔殺人の犠牲になりました。


地図

 「悔しくて言葉にならない」「なぜこんなことに」―。事件から一夜あけた九日、現場となった東京・秋葉原電気街にある交差点には献花台が設けられ、花束を手にした故人の友人らが次々と訪ねました。肩を震わせ涙する人、うつむいたまま何度も何度も手を合わせる人、それぞれに犯行への怒りと悲しみを口にしました。

 亡くなった武藤舞さんと、中学校三年間を同じクラスで過ごした男性(22)=東京都北区=は、献花台の前で「多くの人の命を奪った行為を、ぼくは決して許さない」と話し、唇をかみ締めました。武藤さんの人柄を「クラスを引っ張ってくれるリーダー的存在だった。女子からは『舞ちゃん』と呼ばれ、誰からも慕われていた」と振り返り、「ウソであってほしい」と涙をぬぐいました。

 「宮本くんはアニメや漫画が好きで秋葉原で育ったような人だった。せつない」。現場から約二百メートル離れた商店オーナーの男性(44)は、何度も手を合わせました。

 男性は、最初はお客だった宮本直樹さんが二十代半ばでパソコン関連会社を起業したことや、その後、池袋にゲームのカードを販売する店を出したものの体調を崩して閉店していたことに触れ、「向上心があるハキハキした若者。また会社をやりたかったと思う。無念です」と話しました。

 「これから警察に行って、亡くなった友人や遺族の方と会ってきます」という女性(28)は涙にぬれた顔を覆いながら、思い出を語りました。一カ月ほど前、秋葉原で会い、イタリア料理屋でご飯を食べたのが友人を見た最後。「そのときは、こんなことが起きるなんて…。何でなのって思う。信じられない」

 「秋葉原の街が好きだから」と献花に来た人もいました。

 アイドルのイベントに参加するために毎週のように秋葉原に来るという男性=港区=は「好きな場所を踏みにじられたような気がした。社会に不満があっても他人を傷つけることは許せない」。秋葉原の路上を週に二回掃除しているという男性(68)=千代田区=は「三十年以上、この辺りに住んでいるが、こんなことは初めて。やりきれない」と話しました。(本田祐典)


自分の身近で まさか

恐怖の現場

 買い物客などでにぎわう繁華街。加藤容疑者はトラックで猛スピードで突っ込み人をはね飛ばしました。その後、手にしたナイフで通行人を次々と刺していきました。当日、現場に居合わせた市民らは、通り魔犯罪の恐怖や凶行への怒りを語りました。

 男性が刺されるのを目撃した現場近くの電機器具販売店の男性店員(28)は青ざめた表情で「犯人は、笑っているような顔をしながら、すごい勢いで通行人を追いかけていた。そして身体をぶつけるようにして刺した」。路上には何人もが倒れ、血が吹き出していたといいます。「犠牲になった方は本当に気の毒だ。なんで無関係な人を襲うのか。最近、通り魔犯罪が多いけど、まさか自分の身近におこるなんて…。今日の出来事はずっと頭から離れないと思う」

 「逃げろ、逃げろー」。事件当時、現場にいたという大学生の男性(21)は、「最初は、なにが起きたのかわからなかったが、血を出している人が見えたので必死で走った」。しばらくして戻ってみると、道路に何人もが倒れていたといいます。「救急車を呼ぶ声などで騒然としていた。犯人は、トラックではねられた人を助けようとした人も刺したそうです。こんな卑劣な無差別殺人は許せない」

 慶応大学大学院生の女性(27)は、犯行から二十分後ごろ現場を通りかかりました。「交差点に何人も倒れていた。黄色のシャツの人は左側半分が赤く染めたようになっていて、赤いシャツかと思ったけど、違っていました」。その直後に友人から携帯電話で通り魔事件がおきたことを知らされました。

 女性は、事件翌日の九日、秋葉原の事件現場を再び訪ねました。

 「ひどすぎると思った。法学を勉強しているのですが、こんなことを許さないためにどうしたらいいのかと思う。何かしないといけない気がする。気持ちの整理ができず、それで花を持ってやってきました」(本田祐典、森近茂樹)


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