2008年6月7日(土)「しんぶん赤旗」

主張

高齢者差別医療

廃止以外に解決策はない


 日本共産党、民主党、社民党、国民新党の野党四党が提出した、後期高齢者医療制度を廃止する法案が、参院本会議で可決されました。

 七十五歳になったら国保や健保、扶養家族から追い出して差別的な医療制度に囲い込むやり方に、ますます国民の怒りが高まっています。

 国庫負担を減らし、低所得層に重い負担増を押し付け、今後も保険料は大幅に上がること、医療の制限につながる診療報酬制度と一体になっていること…。

 制度の根本問題が次々と明らかになっているにもかかわらず、自公は「制度の骨格は間違っていない」として廃止法案に反対しました。

低所得ほど安いとウソ

 「制度の仕組みとしては、これまでの保険料よりも安くなる。特に、所得の低い人は安くなる」(公明党の福島豊社会保障制度調査会長、五月四日NHK)。こんなふうに厚労省と与党はアピールしてきました。ところが、これがまったくのウソであったことが、当の厚労省が発表した調査結果で明らかになりました。

 とくに負担増になる世帯構成を除外した上、丸ごと負担増の健保の扶養家族二百万人を対象から外した不当な推計調査です。それでも、負担増になった人は、所得が低いほど多く所得が高いほど少ないという、政府・与党の説明とはまったく逆の結果が出ています。

 「制度の骨格は間違っていない」と言いながら政府・与党は「見直し」を繰り返しています。制度の実施前に早くも、扶養家族の高齢者からの保険料取り立てを半年凍結するなど「見直し」に追い込まれました。さらに与党は新たに低所得層の保険料の軽減を実施するとしています。

 保険料をめぐる政府・与党のドタバタそのものが、後期高齢者医療制度がお年寄りに強いる負担の過酷さを証明しています。

 与党側は機会あるごとに「見直し」は自らの成果だと胸を張っています。「公明党の強力な推進で高齢者の中で中・低所得者に対する負担軽減策が実現した」(公明・斉藤鉄夫政調会長、四月十日)。「実情を踏まえて低所得の方々に対する対策に重点を置いた」(町村信孝官房長官、五日)

 元閣僚さえ「後期高齢者医療制度は財政上の都合ばかり優先され、人間味が欠けている」(塩川正十郎元財務相、「産経」四月十七日付)と嘆いています。この悪法を二年前の国会で野党の反対を押し切って強行採決した張本人が公明党であり自民党です。国民から痛烈に批判されて見直しを余儀なくされたのに、それを「成果」だと言って手柄にしようとするなんて、どこまでも国民を欺く不誠実さです。

根本から非人間的

 与党の小手先の「見直し」では、お年よりの苦しみは決してなくなりません。一時的に一部の保険料が下がったとしても、後期高齢者医療制度は二年ごとに保険料を自動的に値上げする仕組みです。厚労省の資料から試算すると、団塊の世代が加入するころには、保険料は今の二倍以上に跳ね上がります。

 制度の創設にかかわった自民党議員が二〇〇六年の国会で、はっきりのべています。後期高齢者には「積極的な医療よりは『みとり』の医療を中心にした新しい診療報酬体系をつくっていけば、それに対してまさしく医療費の適正化が行われる」(西島英利参院議員)。

 高齢者を強制的に囲い込んで負担増と医療制限を迫る後期高齢者医療制度は根本から非人間的です。衆院での廃止法案の成立が不可欠です。



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